速報→「死の町」チャリT企画
2011.12.18 13:00 [CoRich]
チャリT企画の新作は、鉢呂経産相の辞任のきっかけになった「死の町」発言をめぐり仮説を交えた検証の体裁を取る、こっちこそよっぽど「日本の問題」な、しかしエンタメな60分。18日までギャラリールデコ5。
大臣辞任のきっかけとなった「死の町」発言、その謝罪の後に出てきた「放射能つけちゃうぞ」の発言のダブルパンチ。報道で語られる言葉がいまひとつはっきりしないこと、発言の時間軸と報道の時間軸がずれているという謎を、古今東西の名探偵たちが解き明かす。
新聞やテレビの報道、その報道の微妙なずれやおかしさというのはネットでは粘着質なほどに語られています。基本的には報道されていることをベースにしている本作だけれど、その大筋の主張はネットに比べて目新しいというわけではありません。が、これをちゃんとした役者が「語り口」も含めて演じるというのはメディア自身はこの問題を扱うことはしないでしょうから、小劇場のわりとちゃんとした役者たちの口から語られる言葉として聞こえること、というのはネットの文字面とは違う説得力があります。これこそYouTubeとかで流せばいいのになぁと思ったりもします。
死の町と発言した前後の文脈、福島県民のことば、オフレコ談話で語られた「放射能つけちゃうぞ」のどうにも不明瞭で媒体によって違いすぎることば。報道のタイミングがエネルギー行政の根本的な方針を脱原発と推進とを半々にまでたかめようという部会のメンバー発表の直前という怪しさ。
前半は池上彰よろしく、あるいはショーアップされたニュースショーやワイドショーの体裁でテロップを使ったり、疑問を疑問のままぶつけながら進めます。報道された発言がどうしてこうもぶれるのか、最初に報道したフジテレビの記者はその場には居たけれど談話の輪のぶらさがりの中にはいなかった、という多少の憶測、なすりつけられたとするTBSやその作業服。その「つけちゃうぞ」発言の前後があまりに不自然で唐突に過ぎること。
彼らの語り口がいいな、と思うのは、どうしてこのタイミングで、ということからいわゆる東電やメディアの陰謀説というところをにおわせながらもそこに踏み込まないこと。それはもう憶測でしかありませんから、物語としてはおもしろいかもしれないけれど、こういう体裁を取るときはあまり巧く働かないような気もします。それならそれで事実を存分に想像力で補完するパラドックス定数の作家がどうやって語るかな、というのはちょっとみたい気もします。
後半はもうすこし作家の想像力が入ってきます。発言の流れがあまりに不自然なこと、それを補完するように現場では何が起きていたのだろうと想像する力。もちろんそれは憶測には過ぎないけれど、そうだったかもしれない、と考えるちからのようなものは少なくともアタシ自身はどんどん落ちている気がして、そういう意味でははっとさせらるところでもあるのです。前半の疑問、後半の想像力というのは、行きすぎてしまえば意味のない妄想にすぎないけれど、そういう頭の働かせ方をしていくこと、という意味で、まるでメディアリテラシーの教科書の一部のようで、実に鮮やかなバランスなのです。
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