速報→「乞局」乞局
2011.12.11 14:00
劇団名をタイトルにした、旗揚げ前の公演、10回公演に続く三演め。もはやマスターピースの風合いまで感じる120分。13日まで王子小劇場。
商店街の喫茶店。店の真ん中に金網で囲まれた不思議な作りになっている。子供を預けた弟が養育費の振り込みが滞っていると訪れている。妻は一晩寝ると記憶が病気になった時点の記憶に戻ってしまうため、その日起きたことを分厚いノートに書き留めている。
今年風に味付けはしているけれど、基本的にはそのままの物語。 いわゆる記憶の消しゴムの話は数あれど、うんざりするほどの毎日の繰り返しを過ごすことの幣束感の物語のベースにする発想のおもしろさがこのモノガタリの骨格の強さ。 飛び抜けて気持ち悪い、というシーンは実は減っている感じもしますが、じわじわと効いてくるシーンがいくつもあります。
多少のネタバレをしつつ。
女性たちの描き方はどこか優しい感じで、バラエティーに富んでいて、深みを感じさせます。かつては女性を怖いものと描いていた作家が結婚や子供を育てるのを経て変化していると思うのです。
たとえば、恋人気取りだけと迷惑千万な会社辞めたはいいけど就職できない男、つきまとわれる女。断れない感じの女が恋人を得て、断る力をもつようになるという流れ。そのフラットな普通さが今作では自然で、演じた墨井鯨子には可憐さすら感じてしまうのです。
出番は少ないけれど、サラ金の取り立てにくる女。返済が進んで、いよいよおわりかという時期に思い詰めたように店を訪ねるシーン、その気持ちの原動力の説明は少ないけれど、妻を見ての動揺がすべてを了解させるのです。演じたザンヨウコはいわゆるお母さん役が多い最近だけれど今作では物語の上では少なくとも恋心が素敵に。
記憶をなくす妻、という物語の軸を演じた田中のり子、単なる悲劇のヒロインを越えて、忘れちゃうなりに、といいながら時に夫を手玉にとるようなシーンがあったりしてぞくっときます。
近くの飲み屋のママが祭りで弾けてしまうシーンは鬼気迫る感じすら。演じた石村みかのダイナミックレンジ。兄を演じた用松亮、ある種のだらしなさ感があったりしつつ、実はもっともフラットにあたしたちに近い視座なのではないかとおもいます。
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