速報→「節電 ボーダー トルネード」クロムモリブデン
2011.12.25 14:00 [CoRich]
クロムモリブデンの新作。前回の4月公演は震災前に作ったものを震災直後に上演して苦しかったが、今作は正真正銘震災後に作ったのだという105分。大阪の後、東京・RED/THEATERでの上演は30日まで。
竜巻に襲われ大きな被害を受けた町。ひき逃げ事件を目撃した女、ひき逃げされた女、ひき逃げしたタクシーの運転手をつきだした女たちが警官のもとを訪れるが、取り合わない。竜巻で倒壊した隣町の刑務所が緊急避難措置で囚人を「切り離し」たので、この町にやってくるからそれどころじゃないのだという。
いっぽう、竜巻でホスピタルが倒壊して路頭に迷っていた患者の女二人、エレキギターをもった「先生」のもとでバンドの練習を始めるのだが、電力がどうにも足りない。
舞台左右に設えられた高めのステージ、その中央に穴。そこをブースにしたり出入りに使ったり、時に飛び出すよう出てきたり、ぐるぐると人が巡ったり。たとえば終幕で衣装が替わるびっくり、あるいはトランポリンかと思うような勢いで飛び出してきたりと、派手ではないけれど、舞台を使いこなします。いくつもの劇団(総数姉妹のソビエト系の芝居はすごかった)にとってのTOPSがそうであったように、REDを知り尽くしたクロムモリブデンだから、さまざまに使いこなせるのだなぁと思うのです。
クールビューティが特徴な幸田尚子が可愛らしかったり、妙な感じだったりという新しい魅力。七味まゆみとの掛け合いは時に漫才のよう。 渡邉とかげは、すっかりと綺麗な女の子(ラジオボンバー出演の時の切れキャラも好きだけど)。金沢涼恵の包帯巻いた姿にちょっと萌えるという気持ちはわからないでもないなとおもったり。今作、女優をフィーチャーしたつくり故か、どの女優もきっちりと魅力的でおもしろくて可愛くて。荒削りだったそれぞれの魅力というより、みんなきれいになっちゃうというのは、ちょっと危惧しないでもないのだけれど、裏を返せば誰でも美女から三枚目まで、というのをきっちりできているわけで、厚みを感じるのです。
ネタバレかも
震災に騒がしくなる町の風景、被災地を撮りたいという女は語られつつも、じっさいのところ、襲われた女を骨子にした物語になっています。そのトラウマは、襲われたにまともに取り合わなかった警察、目撃者、被害者が出てきても動かない警察というものへの怒りだと感じるのです。
モノガタリとしてはわかりやすいわけではありませんが、 囚人たちの話、囚人たちを待つ近くの町、目撃したり被害にあったのに取り合ってくれない警察官の話と、少々わかりやすく精神を病んでいる二人組の物語が並行して。あるポイントですっかりと片方がもう片方に包含されていって収束するとはおもいつつ、着地点の想像が付かない感じ。わりと深刻な話だけに、ほっぽりっぱなしというわけにはいかない話を、作家はしっかりと、丁寧に、未来と安心をみせるようふんわりと着地させます。
役者たちがスーツ姿に切り替わるのは、彼女が日常を取り戻したのか、あるいはこれもまた妄想なのか。今回に限っては、前者だと思うのですが。スーツに「切り替わる」というのはゲームの横スクロールのように役者がくるくると入れ替わっていくうちに、いつのまにか着替えてしまうのですが、ちょっと魔法のようで楽しい。
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