速報→「日本の問題(A&B)」
2011.12.4 13:00 [CoRich]
150分(休憩10分)のあと、トークショー25分。4日まで中野・ポケット。
震災に巻き込まれた妹を想い兄は走る、走り続けて光の速度を超えて、あの3日前にたどりつくが「金魚の行方」(経済とH)
流されてなくなってしまった町。ヤクザ風の男二人が訪れた廃墟にはシスターが居るがどうもインチキくさい。ここが教会だと信じて居るようだが、男たちは死んだおじきの残したマイボールを返すために廃墟となったボウリング場に来たのだ「天使なんかじゃないもんで」(Mrs.fictions)
解散を繰り返し、首相は次々とかわり人々は騒ぎ、最初は様子をみててもすぐ飽きる「ボレロ、あるいは明るい未来のためのエチュード」(DULL-COLORED POP)
最初は廃棄物を処理するためにつくられた「消滅」の技術だったが300年後、権力となり恐怖の装置として働いていた。エリートを選んで教育のために治外法権的に扱われてきたこの学習センターにもその手は迫ってきた「博物学の終焉」(風琴工房)
震災の直後、人の居なくなった被災地を回り、タンス預金を盗む旅を続ける男女。ふと見つけた車の中で死んでいる女の指に輝く指輪を見つけた男は指を切り落として指輪も盗もうと考えるが、女はそれは踏み越えてはいけない一線のように思えてカッターナイフを渡すことができない。「指」(ミナモザ)
女子高生がテレビを見ていて思いついた。もう混乱の極みに来てしまった日本は解散して小国の集まりに「廃県置藩」するしかないのだ。その意見を採り入れようと若き首相は考える。「日本の終わり」(アロッタファジャイナ)
男は女と京都を旅行するうち川原で男たちに拉致され警察に誤認逮捕されすべてを失う。数年後、東北の川で魚を捕っているところを熊と間違え撃たれ、未亡人の家につれてこられるが、もはや身体はうごかなくなっていた。その娘は母を心配して「立たない」男をどうにかしてくれないかと新聞の三行広告を打ち、やってきたのは防護服で身を包んだ「テコキの女王」だった。「枯れ葉によせて(仮)」(ろりえ)
避難して空き家となった家を訪れる妻と娘。二人は東京に引っ越していたが、夫はこの土地で避難所の生活を送って別居が続いていたが、自殺してしまった。理由がどうしてもわからず、理由を探して妻はこの家を訪れたのだった「甘えない蟻」(JACROW)
「金魚〜」は切り貼りして並べた壁新聞という印象。作家が経済評論家という肩書きなら事実の解説の先にもう少しなにかあるんじゃないかという期待だったのですが、ファンタジーに着地しようとしているのはわかります。若い役者を存分に走らせるというのは疾走感があっておもしろいのはたぶん、ドラマ「太陽に吠えろ」と同じ仕掛けなのだろうけれど、生身の役者がいることの重要さ。
「天使〜」はこの短い時間でがっつり物語、今回の中ではアタシの友人たちに(もちろんアタシも)もっとも評価が高かったのがこれで、濃密で印象を残します。場所があり、謎の人が居て、集う理由があって、別れる理由があって、心が通う瞬間があって。わずか20分とは思えないぐらいに盛りだくさんで、きちんと丁寧に物語が紡げる奇跡。
ヤンキーの素直さ、戻れば死ぬとわかっているのに戻る男たち、聖職者ならそれは止めるでしょうな感じ。終幕、誰もいなくなった(が物は残っている)空間は、この土地に居続けてしまったがために亡くなってしまったのか、それとも東京に3人で向かったのかという余韻がのこるのも巧い。
「ボレロ〜」は、トークショーによればほぼテキストは書いてないそう。エチュードと、首相就任の演説の抜き書きで構成。ゴングを鳴らした谷が象徴しているものは、本人は特に意識はないと云うけれど、それは私たちか。飽きちゃってる私たち、とうのも私たちの姿。それを観客の私たちに突きつける切っ先。それにボレロという単調なリズムを組み合わせるのは巧くて、ずっと続いてきたこれまで。ボレロの最後のシンバルが鳴るのはいつなのか、そしてそれはどういう形になるのか、という現在進行のあたしたちのドキドキが余韻に残ります。
「博物学〜」ファンタジー、SFか。なんか不思議な手触りで優しさすら感じさせます。描いているのはずいぶんと暗い世界の絶望があるけれど。廃棄物は確かに日本の問題。分類して言葉を生み出して人に伝えるのを支えるのが博物学で、それが希薄になっているというのは頷ける解釈だなぁと思います。物語としてはけっして成功していない気がしますが、このモチーフは愛おしい印象を残します。
休憩を挟んで、
「指〜」は、ある種の極限の男女、踏み込んではいけない領域の線引きの違いとその駆け引きを鮮やかに。指輪を金目のものと考えると切り取るのを拒んでいた女が結婚指輪なのだといわれるとあっさり同意したり、あるいは死体は人じゃないから盗んでもいいけれど、それが知り合いだとわかると、指の切断はしたくないと思うという、くるくると変わる線引きがおもしろい。それはいろんな理由で放射線量とか、限度ということの難しさという意味で今の日本の国の問題という深読みできちゃう楽しさ。
「日本の終わり」女子高生が思いついた政策を首相が受け取る過程が端折られていてアタシには繋がりがみえづらいのが残念。終幕の演説は作家の自説なのかなと思いながらうつらうつら聴いていましたが、そこに説得力が欲しい。ほぼデタラメ(にアタシは思える)演説を(広い意味での)演出によって人民を鼓舞するという演説の怖さを感じさせるラストシーンは見事だと思います。
「枯れ葉〜」はポップにすぎて怒られそうな題材の扱い。確かに風俗ってのは日本の問題のひとつだし、地方の過疎化も、女性の性欲にしても、それは日本の問題なのかそれともどこにでもある問題なのかというのはよくわかりませんが、この中でこれを取り上げたのはここだけだというのはちょっとおもしろい。まあ、そういう担当ともいえますが。センスのいいところがいくつもあって、真ん中あたりで第二部、と宣言して同時に(そこまでは謎の)防護服の人が宣言した人を振り向くという瞬間のスパイスが実にすばらしいのです(いや、物語としてはまったく関係ないのですが)
「〜蟻」はJACROWらしい緻密さが魅力だけれど、トークショーで作家が語るとおり、女性故のやわらかい感じが全面にでるのは珍しい気がします。トークショーによれば、震災前に予定していた企業と自殺の問題だったもとのアイディアが震災によって変更を余儀なくされたのだといいます。震災があってもなくても、自殺は確かに今の私たちの問題ですから、そこを見抜いた作家の力を感じます。
企画は311以前のもので、それ以降には演目を変えたり、題材をかえたりしたのだといいます。たしかに震災は今何かを表現するときに避けて通りづらいのは事実なのだけれど、どうしても「震災の問題」みたいな感じになってしまったのはもしかしたら誤算だと思いますが、それはまあ、仕方のないことかなと思います。
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