速報→「バンザイ」劇26.25団
2011.12.24 19:30 [CoRich]
26.25団の新作。いまこの時点の下北沢での上演に意味がある、のだというちょっと盛りだくさんなじつはラブストーリー。28日まで駅前劇場。105分。
商店街のたこ焼き屋。実家から取り寄せた国産小麦をウリにした「つるまきスペシャル」は近所でも評判だし、修学旅行の高校生がわざわざ訪れたりもするが、フランチャイズ本部の警告を受け、出せなくなっている。アメリカ人のミュージシャンは向かいのスナックのホステスに教えられてこのたこ焼きを食べたいと云って訪れるが、勘違いから店主は彼のことを刺し殺そうとする。そこをそのホステスに見られてしまう。
いまから3年後の下北沢。小田急線の地下化が完成していて町並みが変わっているけれどそれからは取り残された感の路地。なるほど現実の商店街を歩くとある、こういう風情のもともとは個人経営のたこ焼き屋っぽいものがあります。こういう路地があるかどうかはよくわかりませんが、北口横に広がるバラックの路地の雰囲気はありますが、あそこはスナックないしなぁ。
放射線の被害、遺伝子組み替え小麦、地方の農業の疲弊と、土地が道路に変わって大金が転がり込むことを期待してしまう人々のこと。あるいは店そのものは変わらないのに、個人商店がフランチャイズに加盟することで仕入れやメニューを本部開発のもの以外が許されなくなるという商売のこと。今の私たちの食をめぐるさまざまを物語の軸に、下北沢という場所の今を舞台にして織りあげられていることに、年末に上演されることの意味があるのだと思うのです。
全体的に素直に見やすい構成になってきています。少々屈折しつつも、ちゃんとラブストーリーになっているのもクリスマスの夜の独り身には堪えるということ以外には問題はありません。ただ、正直に言うと、終盤、トランクの中身が明かされたり、そのトランクを押入に放り込んで「閉じこめて」しまうというあたりの気持ちの流れ、じつはよくわからなかったりします。このあたり、やっぱりこの作家、一筋縄でわかりやすくまとめたりはしないのだな、と感心したりもするのです。
物語の本筋というわけではないのだけれど、今作、やけにネットやスマホが表に立っているということを感じます。作家が今年それに何かを感じたということなのでしょうか。 たとえば「食べログ」をめぐる少しばかりの台詞。それはあのサイト限定の話ではなくて、軽はずみな発言からの大事になってしまうことだったり、あるいはネットの口コミ評価というものの危うさは芝居界隈のCoRich(このサイトが悪いわけではなくて、それ以外の芝居関連の口コミサイトは、こういう小細工が効くほどには規模もなくて機能していないということなんですが)とも近い感じ。あるいは音声翻訳はSiri(wikipedia)であと一歩だし、iPadでフランチャイズ本部への発注端末とするというのもありそう。あるいはTwitterの位置情報なんてのも、ありそでなかなかこういう芝居を書いている作家は小劇場界隈では今年、あまり居ない気がします。(カレログ、なんて格好のネタのはずなんだけどなぁ)。
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