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2011.11.07

速報→「往転―オウテン」世田谷パブリックシアター

2011.11.6 16:00 [CoRich]

若手の作家・演出家を迎えて幅広い世代に受け入れられる作品創造を目指すという世田谷パブリックシアター制作の新作。130分、20日までシアタートラム。4つの同時進行の物語といいながらも、それをきちんと一つにまとめ上げる奥行きの仕上がり。

高速夜行バスに乗り合わせた人々を軸に4つのものがたり。
長患いの末亡くなった母親の葬儀のあとに全国に散らばる兄弟たちに出会う旅に出た女とその不倫相手の男の旅「アンチェイン・マイ・ハート」
桃農家の男が婚約者を連れて帰ろうとしたが叶わず、女だけがその男の双子の兄弟の弟のもとへやってくる「桃」
両親にわかってもらえず発作的に二階から飛び降りた若い女の入院先、隣のベッドには眠り続ける男がいて「いきたい」
夜行バスに乗ろうとしていた男に声をかけたのは、中年の女性。子供の頃に住んでいた家の近くのおばちゃん、だというのだが「横転」
夜行バスに乗り合わせた人々。まあ、アタシにとっては(夜行じゃないにせよ)けっこう身近な話題。その事故を一点の要としながら、それぞれの物語がその前後、時間軸にそって物語が扇のように広がっていくような感覚。かっこわるい中年の恋心、逃避行。冷徹な男の気持ちの変化。心の傷を負った女と年上の女の友達感覚の会話。婚約者の弟のところに転がり込んだ女のたたずまい。桑原裕子が最近とみに力をつけてきた「さまざまな立場の女性たちを描き出す」ということが、力のある役者を得てさらに奥行きを持ったような印象があります。

兄弟たちに会う旅の準備をしているところに数年ぶりに訪れた不倫相手の男の距離感、互いの状況が変わっていたりして、相手に踏み込むべきか戸惑う感じが実にいいのです。あるいはおばちゃんと男の会話。ずけずけとした感じ、それを断れない感じ、男の今の立場ゆえの冷たさが変わっていく感じとか。 あるいは桃農家の庭先で喧嘩する二人の会話。

正直に言うと、全体からみると物語のつじつまのため、という役が無い訳ではありません。それでも、作家はそこにきちんと物語を与えることで、さまざまな生き方人々という厚みを増しているのです。序盤でバスの模型とビデオカメラを使った少しばかり凝った感じの演出は、大雨のバスの中ということを素早く描くのには成功しているものの、物語全体からすると、ことさらにそれに凝らなくてもいいような気もします。

高田聖子、大石継太の中年カップル、近づき離れという距離感の絶妙さ。市川実和子の「転がり込んだ女」のぶっきらぼうな感じからの少しばかりのツンデレ感にきゅんときます。穂のかの心に傷を負った女は若さゆえの壁の思い悩みをしっかり。その年上の友人を演じた柿丸美智恵が実にいい年齢なりの味わいがすてき。峯村リエが演じる「人のいいおばちゃん」感がもの凄くて、仗桐安が演ずる少し人見知り感のある男との掛け合いのバランスが実にいいのです。

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