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2011.11.20

速報→「戦場晩餐」パラドックス定数

2011.11.19 15:00 [CoRich] パラドックス定数の新作。戦場をめぐる中華料理屋の話、というまったくの創作な120分。スペースエッジで23日まで。

日本、とくに都内は日本人と外国人の小競り合いに端を発して治安は崩れてしまっていて武器が普通に所持され、地雷が平気で埋まってたりして金持ちたちは東京を逃げ出してしまっていて、動くことのできない低所得層ばかり残っている。この中華料理屋はごく普通の汚い中華料理屋だが、食材の入手すら困難でいい値段がついている上に、命の危険を冒してでも、出前をしている。

銃の所持が禁止され平和ぼけになっているのはアメリカで、日本は教育が綻び、文盲もそう珍しくなくなって、外国人と日本人の小競り合いがエスカレートしている、という背景。移民(外国人)が低い賃金で働き日本人の雇用を犯し、移民は移民で低い所得に甘んじているという移民と自国民というのをベースに。戦争ではなくて、最初はきっと小競り合いなのだけれど、そこで人が死ぬことで民間人同士での憎しみの連鎖を生んでいくということが見えてくる終盤に迫力があります。

これ日本の未来の話かもしれないけれど、バブル崩壊からこっちの日本の別の行き方というパラレルワールドな感じがします。アメリカの銃所持禁止ができるなんてのはずいぶん先どころか可能なのかどうかすら怪しい、というのがあたしの実感なのです。

正直に言うと大雨が降っていた19日昼は、スペースエッジという半屋外な場所には容赦ない雨音。開演まではこれも雰囲気を作り出しているなと暢気に思っていたけれど、いきおい声を張り上げざるをえず、物語の雰囲気の形成はおろか、部分的にはせりふが聞こえないという事態にもなっていて空間を制圧できなかったのは事実なのは惜しいところというかあまりに運が悪い。

ネタバレかも

民間人同士の憎しみの連鎖の先、鎮めるように、「アサリのトウチ炒め」の調理過程。中川智明の語るこのシーンは実に食欲を刺激されます。もちろん語り口、語っている内容ゆえというのもあるけれど、殺し合う人々の先にある生きるために食べることに繋がるからだろうなとも思うのです。

この小さな店(という割には従業員はやたらに多いけれど)の中ですら、料理人と(いつ死んでもおかしくない)配達というある種の格差。基本的には日本人優位、移民を低くみるような社会観になっている世界で、移民排除の動きもあったして。この店の過去にも暗い陰を落としています。排除なんかしない、という今の店長はしかし、料理は作るけれど危険な配達は他人に任せているという構図で安全地帯からのきれいごと、という視線をはっきりと。

カウンター越しの庶民的な中華料理店でもたしかに少ない人数ながら料理の分担のようなものがある店がしばしばあって、それがある種の序列を明示的に見せるような不思議な効果を生んでいます。その中で技術があるから料理人になれる外国人、技術がないから配達に甘んじる日本人というねじれにまつわる人々の気持ちの描き方に不思議な雰囲気があります。

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