速報→「準決勝」あひるなんちゃら
友達の草サッカーチームの大会。準決勝の日。女はあろうことか自分のチームの友達がもらったら喜ぶと思って優勝トロフィーを持ってきてしまう。チームの様子を見にいった女は、犯人の目星がついてないことを知り、返す代わりにトロフィーを購入しようとトロフィー屋を訪れることにする。
友人宅(最初と最後)、サッカーのロッカールーム、トロフィー屋のオフィス、トロフィー作りの職人の家という4つの場所を一人の女が巡る形式。この女以外は登場人物がほかの場面にでることはありません。それぞれが短編のような仕上がりでまるでRPGのように場面がつながります。
友人宅、伯美乃里の久しぶりの出演を祝福するかのように何年ぶり、というようなやりとり。劇団員である黒岩三佳、根津茂尚が揃うシーンでもちろん爆笑編なのだけれど、その何年かぶりということにまるで自分が身内かのように喜び、ちょっと泣いちゃう気持ちになるのです。ここがすべての事件の発端になります。
まったくピュアな気持ちで喜ぶと思って盗んできちゃうという女が物語を貫きます。あひるなんちゃらではなかなかないスタイルで、それぞれの場面の役者がきっちりと面白いので贅沢な反面、役者の出番が少ない感じで寂しくも。でも、20分弱ぐらいのわりと長いワンシチュエーションでもきっちり面白いのです。まるでシティーボーイズのような、というのは誉め過ぎか。でも、なんかグローブ座(でのシティーボーイズとはずいぶん古いけれど)が目に浮かぶよう。
ロッカールームの場面は、この事件の枠組みを作ります。ちょいちょいおかしい人物が混じりますが、つっこみというか私たちの視座に立つ常識の人物が二人居るという唯一のパワフルさが楽しいのです。まるで監督に見えない監督だったり、妹キャラの圧巻(金沢涼恵、あらたな間違ったファンを獲得しそうですが)、審判の境遇ももちろんだけれど、これを三瓶大介が騒がず静かなままで演じるというのも新鮮か感じがします。池田ヒロユキを舞台で見るのも久しぶりでその切れ味が楽しく、堀靖明のつっこみのパワーももちろん。アタシが不得意な連続する繰り返し(そのわりにビューティフルドリーマーは好きだけれど)になりそうなところをすんでのところで止める作家の力量。
トロフィー屋のオフィス、みるからに中小企業の女子ふたり。二人しかいないから無駄話をするけれど、仲良さそうに見えない二人の女子の会話の駆け引きがちょっとすごい。沖縄旅行で会社をサボる話のそのあとの展開とか。あるいは電話口での内緒話とか。そこから始まる確率論のモデル(シュレーディンガーの猫)はシュールにすぎるけれど、SF的な味付けになってるのは好きな人にはたまらないなぁと思うのです。
職人の家、篠本美帆が職人というあまりな出落ち感は否めません。ヤスリの使い方がまったくわかってない感じもするし、それをまねする女(黒岩三佳)は輪をかけて。が、それっぽいプレイな雰囲気がほほえましく楽しいのです。猫という話題をつないだりするのも巧い。
戻ってきた家での話、そこからさらに言わなければ不確定のまま、という最後のオチ、終幕の三位決定戦、という台詞で唸ってしまうアタシなのです。
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