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2011.08.27

速報→「寂寥」セロリの会

2011.8.27 14:00 [CoRich]

play unit-fullfullのヒロセエリが新たに立ち上げたユニットの旗揚げ公演。105分。28日まで「劇」小劇場。

四半世紀前には五人姉妹のアイドルユニットとして一斉を風靡したが、あるスキャンダルをきっかけにして引退に追い込まれたアラフォーな女たち。まだ芸能界に未練があったりあるいは目立たぬよう堅実に静かに生きていこうと思っていたり、恋をしたりとそれぞれの生き方をしている。近隣からは浮いた感じというより嫌がらせを受けたりしているが、5人は肩を寄せあうように一軒家に住んでいる。
ある日、母親の残した住居の屋上にバーを開店しようと考える次女。姉妹たちはあまり乗り気ではないが...

四半世紀前とはいえ、少々アイドルっていうのは無理がないか、というのはまあ云わない約束だけれど、年齢を重ねると考え方で見た目が変わるというのはなるほどな感じ。肩寄せあって静かにくらしている女たち、近所からは理不尽な嫌がらせを受けているけれど、それでもアイドルを引退し母親が亡くなってからも独身のままここに暮らしている。社会生活を送っていないわけではないけれど閉じこもるようにくらしていて、ここから出ていくなんてことは夢にも思ったことは無かったのだけれど、という枠組み。作家の何かの生活の変化があったのか、という雰囲気を感じさせます。まあ、まったくの当てずっぽうですが。

アラフォー女子たちの結婚できない節というよりは、「誰かに必要とされて生きていたい」という一点の感覚を執拗に丁寧に描くのです。近所からは必要とされていないし、でも必要とする人が現れたり、必要とされるところへ彼女たちは移っていこうとするのです。ところが、それが必ずしも前向き一辺倒という感じにならず、むしろ「自分(たち)は必要とされていないんじゃないか」というネガティブな視点が見え隠れしながら描かれます。

新たな生き方というのはつまり、女たちは分水嶺に立っているということだと思うのです。ずっと一緒だった人々が新たな道を歩んでいく、という感じ。まるでキャンディーズ「ほほえみ返し」のようだけれど、終幕の少しずつ人数が減っていって、そこに残されたという感じの終幕。 あたたかくほっこりした話ではあるのだけれど、どこかそういう一種の暗さが漂うのがヒロセエリ脚本の真骨頂だと思うのです。

まあ、もっともそれでもだめんず的だったり、恋愛に不器用だったりの女たち。個人的な好みをいえば、この手のある種の痛さを笑い飛ばせるような力強さは作家が女性故にアタシは期待してしまうところではあるのですが、今作はそういう意味ではさらりとした印象。 芳賀晶は唯一の男性として、気持ち悪さぎりぎりのところでストーカー紛いな好意の男を好演。遠藤友美賀は受け止めるような優しい感覚にあふれた物語の芯をしっかりと。岡田美子を拝見するのは遊気舎以来か、派手好きな感じにはまります。小山待子は真の巣良さをしっかりと体現します。日替わりでの少しの役、広瀬喜実子を観られたのは本当にうれしい。

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