速報→「ハッピー・ジャーニー」フライングステージ
2011.8,20 14:00
フライングステージの新作。ゲイを扱ってはいますが、じつはその母親たちの物語に見応えがあります。105分。28日まで駅前劇場。来月には札幌でレインボーマーチに合わせて公演があります。
法事のために北海道に行くことを決めた母親に、息子が珍しく一緒に行こうという。久しぶりの家族旅行だから、という息子と東北新幹線のホームで待ち合わせた母親は息子からもう一人連れが居ると明かし、母親は戸惑いながら一緒に行くことにする。息子はゲイで連れはその彼氏なのだ。車中ではもう一人、昔の彼とも出会い奇妙な「家族旅行」が始まる。
ソートンワイルダーに同じ枠組みの物語( 1)があるようです。私は知りませんでしたが、劇中の語り部がそれをきちんと云うのは真面目気もしますが誠意と敬意が感じられます。。 毎年九月に札幌で行われるレインボーマーチは性的マイノリティたちの社会との共生を訴える催しで今年は15周年。物語はこの催しへ参加したいゲイたちとその母親という枠組みで札幌に向かう人々を描きますが、息子からゲイであることのカミングアウトを受けている母親こそが物語の中心なのです。
■ネタバレかも■
カミングアウトを受けていても自分の中では受け入れられていない母親は、親戚や周囲にそれを知られたくないと考えていて。突然息子だけでなく息子の彼氏やモト彼と旅をともにすることに戸惑いながらも、自分と同じようにゲイの息子を持つ母やたちと出会う旅。法事では親戚たちに打ち明けることのできなかった息子のことだけれど、それを受け入れていく母親の姿に涙してしまうのです。
ゲイの息子を持つ母親二人で語り合うというシーンが二つ。仙台ではみんながそれを受け入れているという家族、札幌ではパレードを支える炊き出しのスタッフの一人という形だけれど、どちらもかつての戸惑いと、受け入れた今を丁寧に語ります。仙台と札幌の母親を演じたのは作演を兼ねる関根信一で、ことさらにおネエでもなく、ストレートな女性の「母親」を演じていて、その想いも含めて圧倒的な説得力があります。主役の母親を演じた石関準はほぼ出突っ張りで、こちらもふつうにストレートな「母親」を丁寧に描きますし、ますだいっこう演じる祖母も実に丁寧です。
母親が息子のことを受け入れ難かった原因となるかつての恋心。もうひとつ受け入れられなかった飛行機にだって、息子たちに押し切られたとはいえ乗れるようになる終幕。なるほど、少し時間がかかるかもしれないけれど、ゲイの息子やそのパートナーたちも受け入れられるのだろうと思う「ハッピーな」未来を予感させます。
当日パンフにあるとおり、北海道へ東京から旅する物語を現在の物語で描こうとすると今の東北を無視するわけにはいかないけれど、それを無理矢理に物語に取り込むことをやめて去年の物語として描いたことでこの時間この時代ということに限定されない人々の物語になっていて結果的に成功していると思うのです。
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