速報→「塩ふる世界。」マームとジプシー
2011.8.22 14:00
マームとジプシーの最新作。85分。22日までSTスポット。
海辺の町、海に行こうという同級生の女の子たち。もうすぐ、もうすぐ彼女は遠くにいってしまうから。先週の木曜日の出来事があってから。この小さな町での一週間ばかりの間のこと。
表現としても物語としても実に盛りだくさん。わずか一週間の間の出来事、たかだか7人の子供たちのことなのだけれど、一人の子の母親の投身自殺を核にしながら、そのときにその娘が居たプールのこと、同級生のうちに遊びに行ってそのお兄ちゃんと交わした会話、あるいは海に行く前日のボートでの墓参り、誘い合う風景、いつも同じ顔ぶれの登校の風景とそのマンネリへの嫌気と妥協、大人への階段少しばかり上る女の子のこと。
前半の30分ほどは、海に行った女の子たち、その前日の風景をひたすら繰り返しつつ、女の子の母親の自殺を核に据えます。そこから、ラップだったり肉体の疲労だったり、これでもかと詰め込んだ表現の手法と、小さな物語をいくつも。部分的には維新派のようなリズムだったり東京デスロックでの肉体の疲労という影響というか片鱗を感じなくはないのですが、それが同居してぎゅっと詰め込まれているような濃密さを感じます。
こういうスタイリッシュで身体を使う芝居をしているとダンス畑の方に寄り添っていってしまう予感というのがあって、アタシ個人としてはそうなるとどうにも苦手です。大音量の音楽の中で聞こえない台詞に一瞬その危惧をしてしまうのだけど、発声のあるテキストを核に据えている間はアタシにとっては嬉しいかたち。これで発声伴うテキストがなくなるととたんに自分は興味を失ってしまいそうな気がしますが、今作のバランスは絶妙です。
いままでになく、大人になりかけた子供たちの描写が印象に残ります。同級生のお兄ちゃんに好きだと告白を伝えたいかった女の子と、どうしていいかわからず逃げ出してしまう男の子との間の男女の差、その後の男の子の昼寝とか、あるいはその朝の女の子の夢だとか。特に女の子の夢の方はどうにも色っぽい。複式学級の二つの学年の間での大人と子供の境界線などさまざまな溝というか境界線を強く感じさせる中盤が印象的です。その前段となる、訪れた妹の同級生たちを前にした男の子の「ココが気に入らない」というシーンは客席を爆笑に巻き込みますが、アタシも好きなシーンです。
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