速報→「トロンプ・ルイユ」パラドックス定数
2011.8.14 12:00
地方競馬を舞台に丁寧に作られた嘘が楽しい105分。14日まで劇場HOPE。
地方競馬の競馬場、そこで走る競馬馬たちの住む厩舎。調教師と助手は預かった馬は丁寧に走らせ育てている。父親の遺した最後の15歳馬を持ち込んだ牧場主の二代めはここで飼育員となり、中央競馬で傷ついた馬は再起をねらった馬主がここに預けてくる。そういう厩舎の中、馬たちもそれぞれに思うところあって。競馬の話ではあるのだけれど、どちらかというと競馬馬たちの想いを基点にしてつくられた物語という感じがします。馬同士がしゃべってみたり、それぞれに考えがあったりと、どこかファンタジーめいたところすらあります。だいたい競馬場として設定してある丸亀には競馬場はないようですし、中央競馬の晴れ舞台といってる根岸競馬場だってとうの昔になくなった競馬場。丁寧に丁寧に研ぎすまされた虚構の物語を軽い語り口で楽しめるエンタメな路線なのです。
(2011.8.29追記 昨今話題になっている荒尾競馬場がモデルになっているよう。熊本で海辺にあって、現存する日本で最古の競馬場ということのよう。なるほど。こういうあたりに眼を付けるのがさすが。)
競馬を舞台にした小劇場の芝居というとラッパ屋の「サクラパパオー」が浮かびますが、競馬場のオジサンたちのファンタジーであるサクラパパオーに比べると、馬自信の物語だったりと、もっともっとファンタジーな味付け。パラドックス定数で時折現れる現実に立脚しない物語が強い印象を残すのです。
すべての役者は馬の役と人間の役の二役。全体をみつめる調教員と馬たちのボス、騎手に成り損なう挫折を経験した助手と中央競馬から流れてきた馬と、それぞれの人間の立場と人間をリンクするように役を割り振ったのはしゃれた感じですが、「人間と馬を重ねるな」なんてことを劇中で語らせるバランスのよさなのです。
馬の役と人間の役を、手綱を胸元につけるかどうかで切り替え、ことさら四つん這いにしたりしないところがスタイリッシュ。これは役者を共有する二つの役がそれぞれに似た境遇の人間たちにみえてくるような効果があって物語に深みを与えるのです。
競馬場の予想屋と若者の会話、少々奇妙な性癖のある馬主など、コミカルに強く振ったつくりなのも、気楽に楽しめる仕上がりなのです。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「静流、白むまで行け」かるがも団地(2023.11.25)
- 【芝居】「〜マジカル♡びっくり♧どっきり♢ミステリー♤ツアー〜」麦の会(2023.11.25)
- 【芝居】「未開の議場 2023」萩島商店街青年部(2023.11.19)
- 【芝居】「夜明け前」オフィスリコ(2023.11.19)
- 【芝居】「好男子の行方」オフィスリコ(2023.11.12)
コメント