速報→「サヨナラ サイキック オーケストラ」Mrs.fictions
2011.8.28 14:00 [CoRich]
15MinutesMadeの主催団体として名を馳せるMrs.fictions のひさしぶり本公演。アタシも初めて拝見します。90分。29日まで上野ストアハウス。新しいきれいな劇場です。「おわりの会」と称した出入り自由のトークイベントの最中にだけドリンク類を販売するというのはいいアイディアです。地球に迫りくる巨大隕石群から地球を守るため、米国などの本命の対策の予備として日本が用意したのは、超能力者を集めて対応するという方法だった。が、会場となったのは環境省の屋上に集まったのはヤンキー風の透視能力者、女子高生風の予知能力者、プチ有名人の霊感主婦、自らを宇宙人と名乗る男、屋上に出入りする念写能力者のホームレスだった。どうにもかみ合わない会話、罵倒しあったり、ぶつぶついったりどうにもかみ合わない。少し遅れて、和服姿の女を連れた男が現れる。
終演後のトークショーによれば、Mrs.fictionsには複数の作家や役者が居て、それを年間計画でローテーションを組んでいるのだといいます。今作の中嶋康太のように(トークショーによれば)寡作といわれる作品を手持ちにできる巧いやりかただと思います。
環境省の屋上という場所だけれど、体裁はまるで学校の屋上のよう。それは制服姿の北川未来がフィーチャーされたチラシの効果ですが、みんながある種の未熟さや踏み込めなさ、あるいはゆるさとか甘さをそれぞれに持っているように見えたりもするので、あながち大きな勘違いというわけでもないなあとも思います。。
表面的にはヨーロッパ企画の「サマータイムマシーンブルース」や「冬のユリゲラー」に似たような緩いテイストと笑いにあふれます。が、登場する人物たちの裏側、長期間に渡って受けた怖いほどに理不尽な仕打ちの堆積が見えてくるに至り、それでも生き続けるという弱いなりにも前向きの決意が重く、しかし爽快に言い切る気持ちよさ。たとえばいつでも自分の時間が横取りされていて、自分の人生が来る順番を待っていた、なんてことばの絶望的な重さ。
311以来だと、こういう話はどうしても現実に引きづられがちですが、終末感はありつつも、現実とはすっぱり切り離したのも成功しています。
不思議な感じがするのは、世界にはヤンキーとそれ以外からなりたっているという極端な世界観がどこか貫かれている感じ。透視能力者、霊能力者はヤンキーで、それ以外は(搾取される側、という感じすらして、実にキャラクターのたち位置が明確です。 日本中でヨサコイが一定の流行になるのと同様に、こういうヤンキーなる世界観というのは、日本人にとってはどこか土着な感じで(ヤンキーではなかった)アタシにもはまる感じがするのです。
子供の時はビックリマンシールを百発百中で当てられたのに、そこから引っ込みがつかなくなっている透視能力者を演じた松本哲也は物語をしっかりと牽引します。チラシモデルでもある北川未来のところどころの腹痛のネタがなんか可愛らしい。 理不尽な仕打ち故にその理由を見つけて悪霊にたどりついた霊能力者を演じた萱怜子のヤンキー的なつっぱり具合が楽しい。まさかの、はんなりな喋りと着物姿という石井舞とそのマネージャ風の男を演じた稲川の包み込み包み込まれの関係がきれい。ホームレスを演じた夏見隆太の力の抜け具合、その愛情の深さゆえの念写という説得力。立ち上がるだけで笑いをとるという飛び道具としてではあっても、できそうでなかなかああいうのはできない感じの今井圭佑が実にいいのです。気の弱い公務員を演じた岡野康弘は歪んだような笑顔にいい瞬間がいくつもあって舞台写真としてみたい感じもします。
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