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2011.08.27

速報→「明けない夜 完全版」JACROW

2011.8.27 19:30 [CoRich]

2009年にサンモールスタジオで初演(1, 2) した劇団の代表作をトラムで再演。28日まで。125分。

初演では物語の骨子を語る本編と、登場人物たちに焦点をあてた外伝の二本立てでした。二つを一つに取り込んだことで実にわかりやすく、きちんと物語を隅々まで語っている仕上がりになっています。友人は小劇場ゆえの分かり難さ、あるいは余白、中劇場でのわかりやすさというハコの大きさに応じた作り込みが成功しているといいます。なるほど。

初演に比べて大きく変わったものの一つに舞台美術があります。居間だけだった初演に対して、広くなった舞台を埋めるように玄関、階段、二階の廊下を雰囲気いっぱいに建て込んでいて、作家の頭の中にだけあった、居間の外での出来事を外挿したかのよう。
初演であったシーンもより印象駅でわかりやすくなっていて、たとえば、犯行の瞬間に何が起きたのか、証言が食い違ったのはどうしてなのかを明確に見えるようになっています。正直に言うと、下手側のアタシの席からは、玄関や階段のてっぺんで交わされる会話の表情がみえなかったりするのは残念。

戦後のいくつかの誘拐事件をモチーフに。アタシの記憶のある時代よりは少し昔だけれど、がっつりと昭和の物語。今ならばそういう嘘はつかないだろうとか、運行情報ぐらいチェックしてるだろうとか時代を感じさせるある種のわかりやすい人物の行動は、全てが観客の目に見えるという点で物語は緊迫しているのに、登場人物の行動にはある種の緊迫感があります。

計画を指示した人、実行した人、補助した人。それぞれの理由は終盤に丁寧に描かれます。それぞれの行動は許されることではないけれど、自分のしたいこと、求めるものに追いつめられたゆえの行動ということはしっかりとわかって、そういう意味ではドラマとしてしっかりと作られています。

社長を演じた仗桐安と妻を演じた蒻崎今日子の間の夫婦のバランスの危うさと外面のギャップ、特に妻は感情で押し切らなければいけない役だけに役者には相当な負担と思いますがしっかりと。本庁側で現場の混乱を抑える主任を演じた今里真にしても、所轄の跳ね返りを演じた菅野貴夫にしても、小役人ポジションの課長を演じた川本裕之にしても現場の緊張感や力学を丁寧に描きます。従業員を演じた谷仲恵輔は下町の工場と人情という現場の空気を造り、鉄鋼所の図面描きを演じた岡本篤は静かな一途さを他人とは思えず。いわゆる職場のアイドル、純ちゃんを演じたハマカワフミエの清楚さと、情の厚い愛情の深さから生まれる行動は眼福ではあるけれど、そうするしかない、という彼女の気持ちがしっかりと。

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