速報→「完璧な世界」タカハ劇団
2011.7.10 15:00
タカハ劇団の新作。階下では「よつばと!」の原画展開催中という偶然にしちゃできすぎのタイミングで17日までルデコ4。85分。
大学時代に同人エロゲーをヒットさせた男はそのあと鳴かず飛ばずで30歳になっていた。頭の中の妄想彼女をつくり童貞のままで部屋に閉じこもっている。心配した友人たちは、あの時のようにもういちど同人ゲームを作ろうと誘い、プロジェクトがスタートするが、肝心のストーリーが進まず、挫けようとする男。なだめすかしてなんとか進めようとするが。
いわゆるオタク、同人エロゲームにかかわる人々の物語。頭の中の「完璧」で理想的な世界は、彼らそれぞれが持っているけれど、それは三次元の「リアル」な女性たちの代替などではけっしてない、理想の妄想彼女との世界。もっとも、主人公の男以外は家庭やつきあってるリアルな女は居るようで、それはそれという別枠のものとして生活しているようだけれど、主人公の男だけは、そこに逃避する何かが。
ありがちなクリエイターの話というよりは、それを商業に乗せる人々、あるいはそれで食っていけないという同人レベルのあれこれが出てくる序盤について、作家の目は冷静です。小劇場の話というわけではないけれどそれに通じる感じも。実家通いだったり余裕が有る人々でなければ続けられない小規模な創作活動、それがいい悪いではなくて「アート」という心地いい言葉に逃げずに、それで生きていけるのかどうか、という真剣さは作家の信用できるところだと思うのです。
ネタバレかも
正直にいえば、劇中で引用を明確にしているリピートにしても、あるいは二階の何かにしても、実際のところ物語として大きな驚きというほど斬新というわけではありません。が、作家・高羽彩の男たちを包み込む視線の優しさ。リアルおんな」に気持ち悪い、と云わせ、ダメ男をとことんダメに描いても、それでも愛さずには居られないように思えるのです。オタクの賛歌ではないから、「リアルおんな」の云う、「彼と自分が一つの部屋、コーヒーを淹れているというそれだけで溢れるほどに満たされる気持ち」との辻褄は、女の包容力ゆえのものだと思うのです。
もっとも、物語のほうは、そうそう男たちをリアルに着地させてはくれません。「完璧な世界」に囚われたまま離れられないというのも一つの「リアル」なわけで、それを示唆する終幕は、リアルの厳しさを作家もわかってるわけで。
妄想彼女を演じた深井順子は時にコミカル、ときに愛たっぷりだけれど、自分の思い通りになる妄想の産物とはいいながらも、むしろ劇中でいう「面倒くさいリアルな」女に見えてしまうのはご愛敬。男の理想でありたいと思う情のようなものがあるのは作家の姿が透けて見えるような気がしてしまいます。
石澤彩美は色っぽさはかけらもない感じに造形した「リアル女」をしっかりと、この色気のなさをきっちり変化をつけた姿というのも、やはりリアルなわけで、妄想彼女とのいいコントラストを生んでいます。
根津茂尚演じた閉じこもる男、その仲間たちを演じた岡本篤、松本大卒、キムユス、井手豊たちはそれぞれにダメな、いうよりはいい歳してバカで可愛らしい男たちという造形をそれぞれ別のベクトルだけれど、居そうな感じでしっかりと。
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