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2011.06.27

速報→「標本」乞局

2011.6.25 15:00

乞局の短編集、80分。30日までリトルモア地下。

汚い部屋の男の一人暮らし、なにもする気が起きない。さっきからうるさく飛び回る虫「蜂」
男と暮らしていた女、浮気を見つけてしまいそれをみのがさなかったと詰られた女は男を殺してしまう「蠅」
ツナギ姿にサングラスの兄妹。交尾したくてしかたがない兄と、人の秘め事を覗きたくてしょうがない妹。二人は一線を越えることはなかったのだが、兄のことを覗いてしまったと告白した妹は一線を越えたのだといい「蜻蛉」
水商売のバイトをクビになって帰ってきた女。部屋にもどり化粧を落としたときに店で惚れ込んだ男が部屋を訪れて、一夜を伴にしてしまう「蝶」

ことさらに露悪的でもなく、もちろん感動的でもない、ずれている人々の物語。

「蜂」は部屋で鬱々とする一人男。リア充に対する並々ならぬ敵意をベースにした感じだけれど、作家にとっては過去の話なのだろうという雰囲気で、切実感には少々物足りない。序盤で使う仮面はちょっとおもしろくて、それがだんだん正しい向きの芝居にみえてくる不思議。

「蠅」は女の深い情欲に説得力の高尾祥子が圧巻。浮気をされているのに、それを見とがめたがために詰られて逆上という感じといい実にいい雰囲気。死んでいたはずの男が語りかける後半で見えているのは、かつての過去の風景なのか、女の情欲が見せる白日夢なのか、という体裁で雰囲気がいっぱい。

「蜻蛉」はどういう兄妹かは見えない序盤だけれど、ちょっとコミカルでもあって。兄と妹の越えてはいけない一線を踏み越えたのはどちらなのか、というインモラル感のバランスがいい感じ。兄の秘め事にももうひとおしあるのは短編としておなかいっぱいな感じで密度を生み出します。

「蝶」も塗りたくった顔の島田桃依のコミカル。美人というのとは少し違う顔立ちなのだけど、惚れ込んだ男が押し掛けてしまう、という感じの男好きな感じなのは演出なのか彼女のキャラクターなのかと思ったり。 唐突な一夜を過ごした女と男の迎える朝の離れがたい甘ったるさがちょっと好きだったりします。

★ネタバレかも

当日パンフに書かれている4つの物語に加えて、そのあとにもう一本。それぞれのキャラクターたちが待ち合わせて、カップリングしようかという合コン的な3×3「標本」。

なるほど、虫になぞられて描きたかったのはこれか、というまとめかた。それぞれのキャラクタ、6人が集う合コンのような場所、愛とか恋を期待するというよりはそういう色欲に走るざるをえない、という感じはなるほど「虫」なのだなと思うのです。生きていたらどうしても求めてしまう相手、その切なさのようなものすら感じてしまうのです。

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