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2011.06.12

速報→「桃色淑女」渡辺源四郎商店・工藤支店

2011.6.11 15:00

作家と女優二人で始めたはずの工藤支店、女優二人が出演できないという事態の新作は男ふたりを中心に据えた、音楽劇の様相すらみせる95分。青森・アトリエグリーンパークの後に、下北沢・ザ・スズナリアトリエ春風舎。

元アイドルトリオ・クッキーズの解散後、女優としての道を歩んでいたサユリが亡くなった。ソロで歌を歌っていたミツル、ふつうの女の子に戻るべく芸能界から姿を消していたレイはほぼ引きこもっている状態。グループのヒット曲「スマイル」を求める世間ギャップを感じていた。
その解散コンサートをポテチとコーラ片手にテレビで見ていた男子二人。先に死んでしまったもう一人の男子は性同一性障害を抱えていて、アイドルになりたいと思いながら、命を絶っていたが、その想いを継ぐ二人。

解散したアイドルグループ・クッキーズの少女二人と、高校生の男二人を同じ男性の俳優二人が演じるという構成。 それぞれに亡くなった人がいて、二つのトライアングルが相似形をなします。 一方で男の俳優が女性アイドルを演じ、同じ俳優が性同一性障害の友人をもっていた男子高校生を演じることで生まれる対称のかたち。

解散したトリオグループの一人が亡くなった、という意味ではキャンディーズを感じるところだし、タイトルはなにせピンクレディーですから、そのアイドルとか音楽業界のことだったりを描きつつも、失った友人を巡る二つのトライアングルが並行してすすみます。

これだけの相似と対称なのだから、並行して提示したものをアタシの中で混ぜ合わせて何かの「化学反応」がうまれるはずと思うのだけど、正直にいえば、アタシにはそこにもう一歩食い足りない感じがするのは、何かこなれ具合によるものという気がしないでもありません。それは初日らしい全体に堅い感じだという気もします。

観客の結構多くを占める高校生たちにはどう見えているのだろう、とも思うのです。アタシは作家に近い年齢で、モチーフになった二つの象徴的なアイドルに熱烈ではないにせよファンなので、一晩中語り明かせそうな題材なのですが。(逆にその後のアイドル、たとえば「猫っこガールズ(を、現代口語津軽弁らしい感じ)」 にはとんと疎いわけですが)

当日パンフにあるとおりに、たしかに可愛らしい感じがよく似合う三上陽永という役者ゆえの物語という感はあります。津軽出身で、今作で初めて目にした「現代口語津軽弁」の物語にもかっちりとはまります。そこに対比するように工藤良平は二重構造を最初に提示するポジションゆえに難しい序盤こそ戸惑うものの、確かにそこに可愛らしさが生まれて女の子に見えてしまう舞台の不思議。魅力的な二人の姿を描き出します。

三上晴佳は最近の活躍がめざましく、本作においてもその力はいかんなく発揮されます。テレビのベストテン番組を見てアイドルの振りまねをする子供(これが絶品)から、女子高生の妹、少々怪しい感のある大物歌手に至るまでダイナミックレンジが広く魅力的です。

年齢を重ねたフォークシンガーを演じた田中耕一は、今作の昭和な感じを支え、年齢を重ねた男ゆえの味わいが印象的。お茶の間で子供との距離間をはかりかねる父親という役もとてもいいのです。

青森公演にだけに出演する畑澤聖悟は、ダブルキャストゆえか、普段みせる怪しい飛び道具の破壊力は封印されている感もありますが、医師の一人語りなど、普段よりも地力の強さが前面にでていてこちらも新しい魅力。

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