速報→「IN HER TWENTIES」TOKYO PLAYERS COLLECTION
2011.6.4 19:30
競泳水着の上野友之による別ユニット、TOKYO PLAYERS COLLECTIONの新作。一人の女性の二十代を十人の女優が演じるというフォーマットの発明が楽しい70分。5日まで王子小劇場。
音大に通う二十歳の私。留学も大学院にも行って将来は音楽で身を立てていきたいと思っている。しなきゃいけないことはたくさんある。
三十歳目前の私。音楽もあきらめて、バリバリと働いた結果体を壊したりはしたけれど、仕事も徐々に復帰できそう。
上手下手端に椅子、その間にベッドを模した箱状のもの、その奥にゆるやかに弧を描くように椅子が八脚(序盤は七脚)。上手端が二十歳音大生の私、下手端に二十九歳の私。この二人は何かのインタビューを受けている風情で客席に向きあい。残りの八人は一歳刻みで順番に並んで、それぞれがその歳を、まるで時間軸を輪切りの断面のように鮮やかにグラデーション。端点を外部に向け、その間を脳内と見立てた「二十代断面の一人芝居×10人」という このフォーマットを発明した、という時点で勝ったも同然だと思うのです。音大生というある種の特権性のようなものはあれど、希望と挫折と恋と仕事、追い立てられる感の強い女性の二十代の物語は、たとえば実在の誰かを描いてもさまざまにおもしろくなりそうな、フォーマット自体の強さがあります。
基本的にはすべてが一人芝居、それを(実年齢に近い)女優たちが演じること、その年代なりの顔や個性の変化のようなものもある種のグラデーションに。まったくの一人芝居で演じる(三谷幸喜のマダムバタフライ、なんかがそうだ)というフォーマットとは別の魅力。
このフォーマットから生まれた別のうま味もあって、たとえば、就職の面接をする側と受ける側、たとえば母親との電話といったシーンで、別の場面の受け答えをあわせて見せるシーンを時折挟むのは、単調になりがちな一人芝居の流れのリズムを崩す感じで、実に見やすいのです。
恋の遍歴、初めて出会ったり、ラブラブだったり、分かれる寸前だったりという二十代前半の恋の軸、友人の結婚に焦り、不倫にはまり、年下と恋仲になり、アバンチュールという名のある種のやけくそ感の時期がはさまったりという恋愛体質ってのも、そういう話しが大好きなあたしには楽しい。仕事や実家という要素ももちろん挟まるけれど、この恋愛を軸にする、ということに上野節を感じられてならないのです。二十代が無駄にならないという感じも、実に優しい視線。
あるいは泣き出した全員がマシュマロで泣きやむシーンの女性たちの可愛らしさ。王道な手法なら笑顔まで持っていきそうだけれど、そこまで行かない寸止めのセンスの良さ。
長い大恋愛の末、恋を失う24歳を演じた梅舟惟永.の少々ハードなポジションなのに前向きで暗くならずにコミカルに演じる確かなちから。あるいは若くても仕事バリバリキャリアな27歳を演じた甘粕阿紗子の説得力が、年下への恋に傾く瞬間が素敵。29歳を演じた冬月ちきの落ち着きも気持ちいい。
物語の力なのか、役者のちからなのかいまひとつつかめないのだけれど、20歳はキラキラと輝き、仕事も結婚も、将来の夢をこれっぽっちの疑問も持たずに語るシーンがあまりにまぶしい。若いってことの輝きが全身から溢れるよう。榊菜津美はそれを溢れんばかりの説得力。半面、 「男の人で結構な歳なんですけど、なにやってるかもわからないし、目標とか気合いみたいのも感じられないし、たぶん何となく名にもしないで毎日を過ごしている」という台詞は私に切っ先が向けられたようでイタタ、という感じも。
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