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2011.05.29

速報→「パ・ド・ドゥ」七里ガ浜オールスターズ

2011.5.28 11:00

飯島早苗、1999年初演の二人芝居はサードステージの企画公演シリーズの一本として初演されました。がっつり100分。29日まで王子小劇場。

チンピラ弁護士と揶揄される弁護士。金持ちの離婚調停や麻薬取り締まり法違反の若いタレントの弁護など、ちょっとばかり金になるチャラい感じ。ある日呼び出されて接見に訪れた相手の女は番組製作会社で働くやり手だったが、男を四階のベランダから突き落とした殺人未遂の疑いで捕らえられている。簡単に不起訴になるとあっさり場を去ろうとする弁護士の男を、女は必死に呼び止める。実は二人は一年ほど前に離婚していて、死んだ男は、二人を引きあわせ、離婚後は不倫の関係になっていたのだった。

だだ広い劇場の中央にガラスを隔てた接見室。向かい合う二人を横から見るように設えられた対面の客席。開演直前の暗転で 狭い部屋を一瞬にして作り出します。この鮮やかなこと、密室での会話劇という世界に一気に引き込まれます。

男の浮気が元で離婚した二人。気づいているのに気づかないふりであっさり帰ろうとする男を引き留めようとする女。死んだのは男の友人で二人を引き合わせた男で、恋人の関係になっていることを知り食いつく男。

ネタバレかも

容疑者が助かりたいのだろう、という視点で見ると理にかなった行動が一貫する弁護士に対して、本当に助かりたいのかどうか不可解な行動が続く女。終幕でその理由は開かされるけれど、むしろ、男女が互いにステップを踏みこむような、女からの視点、男がここにいつづけていてほしい、男が幸せでいてほしいから別れもあっさり受け入れたし、でもそうでなくなったいまは、また男と一緒にいたいという気持ち。初演を観たときはそれがまったく理解出来なかったけれど、10年以上を経てみると、その気持ちの動きがものすごくわかるのです。

その一方的な愛情は時にバランスを崩し、時にがっつりと組合わさりながら物語が進みます。動物園や香港での二人の思い出、別れのきっかけの男の側の論理、女の側の論理という過去の話だったり、妊娠、婚約指輪、保険金と、次々と現れる女の隠していた事実。

仕事のグチでも聞きたいという女に、守秘義務だといってとりあわない男のすれ違い。 何で結婚したのよ自分を好きになってくれる人だったら誰でもよかったのでしょ、いいながら離れがたい気持ちがあふれる女の気持ちのある種の粘着さにも、あるいは過去は過去としてというよりは粘りではなくあっさりとあきらめがちな男の気持ちのどちらにも、アタシの気持ちはよりそってしまいます。

チンピラ弁護士ぶりが活躍になる終盤はちょっとばかり無茶な展開ではあるけれど、そこの過程を観る物語ではない気がします。そのプロセスこそがすべて、という作家の物語の濃密さに気持ちが共振するのです。

伊東沙保のまっすぐなまなざし、座り姿なのに全身で距離をとったり近づいたりがまるでステップのようで、予測のつかないようなダイナミックさが見えて魅力。瀧川英次はむしろ翻弄される側でしっかりと押さえる側、チンピラ風だけれど本心を隠しているのはむしろ彼の方で、そのゆっくりと動いていく気持ちがしっかりと。

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