速報→「青に白」ペテカン
2011.5.22 17:00
ペテカンの新作。声優の田中真弓を主演に迎えての父と娘、家族の物語。125分。22日まで赤坂RED/THEATER。
新婚旅行の地・宮崎に夫婦で旅行中だった父が亡くなり、痴呆の進んだ母を迎えに行く娘である私、とその娘(孫)。娘の夫は若い女のところに入り浸ってなかなか帰ってこない。孫は付き合ってけっこう経つ彼氏も居るが、いまひとつ結婚に踏み切れない。空を眺めて雲を「おなら」だと云って笑わせてくれた父のことは大好きだったけれど、母、あの人は私のことを産みたかったわけじゃない、といった。許せなかった。
アニメ声優としてはベテラン組の田中真弓、世間ではルフィ、クリリンの声優として知られるけれど、あたしにとっちゃアニメをそこそこ観ていた時代、ラジオ番組「アニメトピア」前後のダッシュ勝平、忍豚(さすがの猿飛)あたり、という馴染み、なんてのはどうでもいい話。全体として低いトーンのままの芝居でちょっと意外な感じも、と思っていれば終演後の挨拶では「こんなに暗い役はやったことがない」といういつものテンション風で楽しく。
適齢期の娘がいるほどの年齢になっても、惚けてしまった母親に対する素直になれないというよりは恨みに近い陰鬱とした気持ちを持ち続ける女。娘に対しても辛く当たりつづけている。物語の骨子となるこの部分は静かな、というよりは暗い物語。対して賑やかな葬儀会社の人々だったり、笑いを生むほど過剰でコミカルな色気を振りまく愛人だったりと、飽きたりしないままにきちんと進み、きちんと語られる物語は丁寧です。
まるで新劇のよう、というのはアタシにとっては必ずしも誉め言葉ではありませんが、だれにでも寄り添うような物語。反面、アタシにはヒットしない感じなのは、血縁の女性たちの間の確執が腑に落ちる感じでもなく、かといってアタシがとても見たいものというのとも違うということに起因するのかも知れません。
大好きだった父親、浮気する夫という二役を安定して演じ分ける山口良一、愛人を演じた帯金ゆかりのオーバーな感じが楽しい。婚約する男を演じた濱田龍司のコミカル。あるいはダメ葬儀社の中で押さえどころのベテラン社員を演じた四條久美子の歌が圧巻。彼らが勢揃いする葬儀のシーンはこれでもかの盛り上がりで実に楽しいのです。
不満は不満として、それを呑み込んで先に進んでいこうとする女たち、力強いなと思うのです。
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