速報→「グラデーションの夜《桃色の夜》」KAKUTA
2011.4.30 19;00
KAKUTAの三週間連続企画の最後を飾る「桃色」編。恋の話ではあるけれど、演出や役者たちの年齢を重ねた感じのセレクションが楽しい3本。1日までアトリエヘリコプター125分。
雑誌に浮かされて旅にでるけれど、他の人みたいに大騒ぎできない私が思いついたのは、道すがら、見知らぬ男性に尋ねることだった「いま何時?」(田辺聖子)
恋も離婚も経験して、今ひとりの私、週に何度か定食屋で会釈するだけの若い男に浮かれてしまう「わか葉の恋」(角田光代)
オレは彼女のことが大好きで、すべてを賭けて守ってもいいと思っている。彼女もオレのことが大好きだと行っているけれど、もうひとりいけ好かない男が割り込んできて「春太の毎日」(三浦しをん)
一人旅に出た女が泊まった宿では帰ってこない男をずっと待っている猫が居る「グラデーションの夜」
「いま~」は、「ギャル」たちが雑誌片手に旅に浮かれる世間だけれど、気持ちは同じなのに同じように乗っかれない女の出会いの物語。「いま何時?」と訊くことで一人旅でも寂しくないし、妄想も広がったりする、という女、声をかけてきた男は妻帯者だけれど、漁船借りて見た洞窟などの楽しい出来事。今晩の宿を替えて男と同じ宿に、という終盤、期待と不安のゆきずり感はそのシチュエーションを作れるという意味でも30代のドキドキ。
野澤爽子がメインは珍しいけれど、ちょっと内気なのにけなげなほどに声をかけるというのはよくあう感じ。絵描きを演じた尾崎宇内は今回、三本通してみて印象に残る役者。
「わか葉~」はアタシと同い年の作家、ストレスが嫌いで「楽な恋」を見つけてしまう女、定食屋で会釈するだけの若い男にときめいて、明るい色のスカートを買ってしまうという浮ついた感じが春めいて楽しい。
一人でご飯なんて、呑んだりするなんて、という若い感覚から一人でも大丈夫という大人を経て、大人が恋してしまうというのは実感としてよくわかっちゃう感じがします。
女ともだちと飲んだくれた朝、買い物に行ったコンビニで出会う奇跡はできすぎだけれど、若者を演じた渡辺昇の無防備さがぴったりとフィットします。西田薫が演じた女の日常感は腑に落ちる感じ。その友人を演じた高山奈央子の酔っぱらい具合が楽しくて、定食屋に乗り込もうって勢いも好きです。一本目のカップルが定食屋の夫婦というのは意図したのかどうか、でもこれが実にマッチするのです。
もっともコミカルよりな「春太~」は過去のKAKUTAのリーディングにも登場する( 1, 2)「神様」(川上弘美)にどことなく近い、人間と動物の恋物語。テレコな感じに入れ替わっていて素敵に対照をなしているのが楽しいのです。 自分が居なくなった後の世界に残された彼女はどうするのか、あるいは守らなきゃという男の側の論理は「草原の昼食」の感じも。「神様」では頼れる男に付いていくのだ、という女の側の論理。楽しく観られるひとつは、春太を演じた実近順次のオーバーなほどにコミカルさ。あるいは語る若狭勝也のアニメのような声の説得力。柴田さやかのかわいらしさもいいのです。
オリジナルストーリーは、待っている人のこと。澁谷佳世は決して巧い役者ではないと思いますが、モモは実にあっている感じがします。待っていれば報われる、ハッピーエンドなのです。
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コメント
「グラデーションの夜《桃色の夜》」KAKUTA
澁谷佳世さんは決して巧い役者ではないかもしれませんが、モモの気持ちが伝わってきて涙ぐんでしまった人は一人や二人ではなかったと思います。不器用かもしれないけれど、何かひたむきな熱さが感じられる役者さんですね。歌とピアノ演奏で心が癒やされました。
《黒色の夜》では、人知れず殺されてベッドの中に隠されている売りをやっていた女役を演じていました。モモとは全く違うキャラですが、女の心の痛みがよく伝わって考えさせられる作品でした。澁谷佳世さんの今後の活動が楽しみです。
それにしても三作品ともとても面白かったです。朗読劇を観たのは初めてでしたが、絶妙感がありました。朗読と役者さんの息がぴったり!!構成が素晴らしく、楽しめました。
投稿: MOMOLOVE | 2011.05.07 03:56