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2011.03.21

速報→「夏への扉」キャラメルボックス

2011.3.20 14:00

ロバート・A・ハインラインの名作SF (wikipedia)を初めて舞台化(DVDは当面発売なし)。福島正実訳の文庫版(2010.1初版)で350ページを越える原作はさすがにそのままとはいきませんが、スピード感と想いのあふれる140分。地震の影響かどうか、週末も含めて当日券は厚めにでているとのことです。27日までル・テアトル銀座。( 予告編動画)

猫とロボット(ハイアード・ガール=家事を行う)設計をするエンジニアの男。共同経営者のはずの男、婚約者に裏切られる。それでも経営者の11歳の娘はその婚約者のことが嫌いで、猫のことが好きで。裏切られて酒浸りの日々の男は「コールドスリープ」で30年後に目覚めようと考える。裏切った二人にもう一度会いにいった男は術中に落ちて意図しないまま、コールドスリープさせられてしまう。

当日パンフに演出家が書いているとおりSF冬の時代。それでもスピード感と想いにあふれるタイムトラベルものの名作の輝きは失われません。彼らが連作している「クロノス」のシリーズや「スキップ」につながる、名作SFの舞台化は、キャラメルボックスの一つのお家芸になりつつあって、安心感と信頼感いっぱいなのです。

昔に読んだはずなのだけど、本棚にどうしても見つからず、終演後もう一度買い求めました。もちろんいろんなところのことばは古いけれど、SFの醍醐味がつまった物語。少ない役者で多くの登場人物を演じ分けるためにキャラクタに走る演技には好みが分かれるかもしれませんが、ストーリーラインをしっかりと語りつつ、笑いもはさみ、演出で走りきるのです。本を読んでみれば、主役の立場で語られる物語が俯瞰になっていたり、ずいぶん端折ったり、変えてるところもあるのだけれど、舞台として成立させるための手法だということはよくわかります。

猫を演じる筒井俊作、男を演じる畑中智行、娘を演じる實川貴美子を中心に走る物語は、しっかりと劇団の新しい世代の成長を感じさせます。コミカルを演じる坂口理恵、渡邊安理がしっかりと支えます。ロボットを演じる四人の見事さ。

なによりアタシの心を動かすのはヒールの役割を一手に引き受ける岡田さつき。美しくて男を手玉にとる前半、それから30年後の醜悪という後半のコントラスト、彼女なりの理由があるのだろうけれど、説得力と迫力で演じきるのです。

普段のキャラメルボックスではカーテンコールが二度三度が常態化しているのだけれど、電力削減のためにと一回で打ち切ると 云われ残念な気持ちになった直後、代わりに通路を通って役者が退場というプレゼントが見事。そう、こういう細かな工夫と観客を喜ばせるということの積み重ねがキャラメルボックスだということを実感するのです。あるいは、開演前にプロデューサーが語りかける地震の注意点が、実に細やかです。照明が音を立てて揺れる程度で芝居を止め、それ以下なら続けること、前方列がオーケストラピット上に作られていて役者の動きが振動になること、携帯をマナーモードにしても地震速報で鳴ることがあること。この細やかさは特筆に値します。

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