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2011.03.13

速報→「5seconds」パラドックス定数

2011.3.12 19:30

公演中止が相次ぐ( 1, 2)中の上演。開演前に地震や停電による中止もありうる、というコメントのついた100分。いままでより少し長めになっています。13日までアートコンプレックスセンター。ほぼ二人の位置は座ったまま変わりませんから、開場時の椅子の位置関係を参考にして二人の表情を狙いましょう。

羽田沖で着陸直前に墜落させた機長と接見する弁護士。事実関係はほぼわかっているが、機長がなぜその行動をとったのか。

パラ定の再演(1994)、風琴工房の上演に続いてのアタシ的には3演め。いままでの印象は、わりと暗い照明のなか中で息詰まるような男二人の濃密な会話劇でした。今作では全体に舞台は白っぽく無機質、役者の違いもあってずいぶん印象が異なります。息詰まる台詞の応酬ばかりではなく、そこに生きている人物がもっと浮かび上がるような印象が強いのです。

ネタバレかも

今のアタシが今回の機長の造形に見たのは、責任をとる、ということに対する圧巻のプライド。一人で背負い込むことに決めた機長。対する弁護士は心身の喪失を理由にして無罪を勝ち取るということが機長のためだと信じて疑わないのです。が、機長のプライドはそれを許さない。ときに精神が浮遊し(ているようなフリ、かもしれないけれど)、時に自分の復帰を信じて疑わず、丁々発止のやりとりなのです。

終盤で、機長の真実がみえる瞬間のすごさ。着陸態勢から着陸に至るところには専門用語も混じりますが、それは大きな問題ではありません。その「5秒の間に」何があったのか。自分のしてしまったミスを副操縦士が自分よりも早くリカバリしてしまったことへの焦り、それなら自分が機長たる優位に居続けるために出来ることはなにか、というわずかな時間の間の思考の行き着く先の悲劇。その濃密な会話。

正直にいえば、アタシは王子小劇場での再演の時の、黒づくめ、少々くらい照明の中での上演の衝撃が忘れられません。地震の直後の上演の気持ちの中で今作のような明るい(少しばかりは)ポップな演出に救われたというところがないわけではないのだけれど。

座った位置があまりよくなくて、機長を演じた小野ゆたかの表情をかいまみるのがやっと。が、その中でも表情のすごさ、軽口を叩くときの軽やかさに役にとっての現実味のなさの浮遊感を感じます。対する弁護士を演じた井内勇希の「下っ端」だけれど、彼が真実を知っているという一途さがみえる若き弁護士の姿が実によくて。

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