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2011.02.28

速報→「サラミの会」ピンズ・ログ

2011.2.26 14:00

ピンズ・ログの旗揚げ作を6年ぶりに再演。27日まで、110分。テアトルBONBON。

郊外への移転を控えた大学、映画研究会の部室。移転のための片づけも佳境を迎えて、OBの結婚式で集まったOBたち。「サラミの会」という映画、映写機もなく、そのままになっていた。 就職、恋愛、これは踏み台、使えるものは、許せない気持ち、将来のこと、あのころを引きずっている

大学生のほんのひととき、気楽に見えたって、 せっぱ詰まった就職活動という未来が見えない不安と、一年生がカメラを抱えてまっすぐにものをつくろうとする気持ちと、サークルで作ったものが賞をとり、監督ばかりが脚光を浴びて残されたような気持ちを持つ人々と、少しばかりの悪意と。

軽い気持ちで始めたのに引き込まれたドキュメンタリの撮影、それが洒落にならない事態になっても、撮影することを止めることができない気持ち。暴走とは違う引っ張られる気持ちとそれを続けてはいけない気持ちとの狭間。せめてもの償いの気持ちは、発表しないという約束だったけれど、それを試したいという気持ちを抑えきれない。

あるいは、うまくいかない就職活動のいらつき、「要領のよさ」への対比。まじめにやっているということだけが評価を生むわけではない、ということを就職と映画という物作り、という二面で描き出します。そんないろんなことが起きても不思議ではない大学のこの時期を選んでいるのは秀逸で、この時期のおかげで、もうひとつままならない、恋愛という要素にも説得力があります。

物語として観ると、じっさいのところ何かが解決しているわけではなくて、大学生の一時期とその数年後の姿をすぱんと断面を並べて見せる感じの手法と盛り込んだエピソードの程良さのバランスなのだと思います。

ドキュメンタリーが直面した洒落にならない現実を心の隅で「ラッキー」と思ってしまうメディアというものの悪魔の声、そのままではいけない、というのは本当はメディアを操るものたちの矜持(プライドとうよりは責任を伴った誇りという意味合いの)だと思うのだけれど、昨今のメディアに見えるアタシたちの絶望的なきもちを重ねると、その対比は、今だからこそ生きてくるという感はあります。

初演のときも思ったけれど、ナイロン「カメラ≠万年筆」という名作があって、じつは物語や構図というより、キャラクタとしてナイロンに出てきそうな感じの人々という気もするのです。それは決してオリジナリティの欠如などではなくて、ある種の安心感すらアタシは感じるのです。

一年生の監督、この場所を記録に残そうというまっすぐな気持ちを清水葉月が好演、印象に残ります。就職活動がうまくいかない女、まじめさとそのいらつきを説得力を持って竹原千恵。10代の役をリアルにこなす牛水里美は、ちょっと凄い。

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