速報→「明るい表通りで― On The Sunny Side Of The Street―」文月堂
2011.1.29 19:30
三谷智子の文月堂の2007年旗揚げ公演をパワーアップ再演。90分。30日までシアタートラム。
古い商店街のたばこ屋。母を亡くしたあと、三人姉妹の長女が店を切り盛りしている。次女は結婚し家を出てバリバリと働いている。三女は芝居に明け暮れていて、住む場所のなくなった先輩の男も泊めたりしている。この商店街を貫くように幹線道路と駅をつなぐ道路工事が持ち上がり、商店街には地上げの男たちが出入りするようになる。そろそろ潮時だろうという次女だったが、頑として聞かない長女は、この場所に居続けたい理由があって。
昼にみた猫の会と不思議なほど背景となる地上げと頑なな主人公という構図は似ています。そこに居続けなければならないことという点では一方は文学というクリエイター目線だけれど、今作は待ち続けている女、というもっともっと普通にありそうで女くさい視点。
まだまだ何にでもなれる、どこへでも飛んでいけるという三女の若さと、もう結婚も諦めなければならない、自分はどうなるんだろうという長女の対比、あるいはその中間点のように置かれた次女は結婚だった妊娠だったりで生き方がぐるりと変わる立場として。ある年代の女性のステージを三つにグラデーションにして姉妹として描くことで幅広い観客にフックするような厚み。
作家を評して「昭和の」とか「商業演劇のような」という指摘はおおくて、まさにその通りだと思うのです。でも、おしゃれおしゃれ、先端先端では疲れてしまった脳味噌が、こういうシンプルな「昭和っぽい」物語を、これぐらいの規模で見られるってのはやっぱりどこか「カラダが求めてる」栄養の一つなんだなと想ったりするのです。そんな昭和の風景なのに、タイトルはスタンダードジャズから。カッコイイなぁ。1
保育士から地上げに転職した、という役を演じた瓜生和成が、終盤で勝平ともこ演じる長女と二人で会話するシーンが圧巻。情けない感じすらする、力の抜けたような動きとせりふなのだけど、その一つ一つから目が離せなくて、物語に引き入れるのです。が、その直後、長女を巡る二人の男のカットは不穏な空気の後味に。結末は明確には語られませんが、浴衣を取りに行った男の明るい表情が切なさを感じさせます。
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