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2010.12.27

速報→「YMO ~やっとモテたオヤジ~」ラッパ屋

2010.12.25 14:00

ラッパ屋の新作。オヤジのファンタジーの先に着地する120分。26日まで紀ノ国屋ホール、1月に北九州公演。

51歳、中堅の会社の部長になったが、妻とは離婚して10年。それからずっとモテることとは無縁の生活をしてきた。同僚もみんな同じぐらいに出世して、なんとなく横並び。ふとしたきっかけで同じ会社に派遣社員として勤める41歳の独身だという女に心惹かれ、勢いもあって、呑みに誘ってしまう。女は、学生のころからの男友達とと再会し、つきあわないかと誘われていたが、彼には家庭があって。

大の大人が恋心、そこに都合よくはまる、まさにオヤジ好みの女性、というラッパ屋黄金のパターンではじまるものの、作家は会社とか人生なんてことまで標的に入れている感じがして。それに違わぬ役者陣がうれしい。

大きくはない会社とはいえ、部長までにはなって、それなりに会社側の人間となり、しかし定年まであと4年というのも見え隠れする世代。ある種牧歌的なバブルの名残。年が離れているとはいえ、女性のほうもぎりぎりバブル入社ぐらいの世代。女は可愛らしく、大人で、癒してくれそうなふんわりした感じ。そんな女性とまさかつきあうことになろうとは、というドタバタ人情の喜劇、というのはラッパ屋の黄金パターン。

しかし、本作はそれにとどまりません。小さい会社ゆえに見え隠れする社内の派閥争い、いやおうなく巻き込まれていく彼らの世代。顧客よりも会社のため、というあまりにわかりやすい無茶な権力闘争の枠組みをあえて持ち込み、そこに汲々とするサラリーマンたちの「あがり」を矮小に見せ、そこから飛び出す宣言をする男のかっこよさ。

終幕は少々泣かせ、と感じないことはないけれど、おおげさにいえば「男子一生の」なんて言葉を感じさせる深みのあるものがたりをコンパクトに詰めこむ、という巧い方法だと思います。 不条理感すらある「やっともてたオヤジ」を演じた俵木藤汰、主役というのは珍しい感じもするけれど、それに違わぬ活躍。派遣社員を演じた三鴨絵里子は癒しを感じさせる確かさ。いままでも声が特徴的で、舌足らずが売りだったりしたのだけど、今作、そこに落ち着きが上乗せされた結果、声に不思議な魔力すら宿っていて声を聞いているだけで脳が喜んでる、ぐらいに。その友人を演じた。岩橋道子はもう少し下の「バブル後」の女性視点を支えます。 社内抗争に巻き込まれていく同僚を演じた岡山はじめの終幕は、常にいい人でありつづけることの多い彼には珍しいけれど、それゆえに否応なく、ということを強く印象づけます。

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