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2010.12.27

速報→「黴菌」Bunkamura

2010.12.25 18:00

シアターコクーン×ケラリーノサンドロヴィッチの「昭和三部作」の二本め。休憩15分を含んで210分。26日までシアターコクーン。

昭和20年。戦争末期の物資がない時代だというのに裕福な家。長男は脳病院を経営、次男は軍の要職の影武者、末っ子は国民学校の教師と結婚しようとしている。父親は離れに住んでいるが、顔を合わせるということはほとんどなく若い女が愛人として囲われている。彼らには幼い頃になくなったもうひとりの兄弟がいた。

昭和初期のレトロモダンな感じだった全作に比べると、猟奇とか怪奇小説という感じで仰々しさやおどろおどろしさが勝るようなタッチ。絵に描いたような金持ちとその没落、ってあたりがいかにも時代らしい。

兄弟たちと舞台には登場しない父親。ずいぶん前になくなっていた三男をめぐる想いが交錯、というのがおそらくは中心となる物語なのだろうけれど、徴兵から逃れるために嘘の診断書を書いてもらっていた夫婦を実験と称して囲い込んだり、離れの父親のところに通う愛人の兄が入り浸っていたり、脳病院の退院者を使用人として使っていたり。果ては「火星人襲来」のラジオドラマの冒頭部分なんてのが使われたり。

群像劇というフォーマット故か、中心のなる物語がみえにくい気はしまが、全身全霊を傾けて、昭和20年という昭和と戦争の物語を、全体の空気感とともに書ききっているのだという感じがします。

絶望の先の希望、三人姉妹のようで美しい。

「愛するものへのこだわりをじょじょになくしていく薬」という実験。愛する夫婦を地下室に住まわせ、夫にだけその薬を食事に混ぜていく、邪険にされても、夫のことを献身的に愛し続ける妻、という悲しい話、ベタだけど好き。妻を演じた犬山イヌコのぶれのない静かでまっすぐな想いが沁みます。

なぜか独特のしゃべり方をするキャラクタ重視と想われる人物が何人か。その向こう側にナイロンの役者がみえてしまうのはちょっと厳しい。仲村トオルには三宅弘城がみえてしまい、少々厳しい。池谷のぶえにもたぶん峯村リエが向こう側に見えるのですが、彼女に関しては自分のものとなっていてあまり気になりません。北村一輝という役者はCMでしかみたことがないぐらいに知らないのだけれど、きっちり。緒川たまきはすっきり、という印象が強かったけれど、今作で印象に残るのは声の素敵さ。

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