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2010.12.20

速報→「15minutes made 10」Mrs.fiction

2010.12.19 18:00

人気のショーケース企画もついに10回目。19日までシアターグリーンBox in Boxシアター。120分。

2000年を迎える大晦日、部室に集まり酒を酌み交わす演劇サークルの面々の前に現れたのはノストラダムスと名乗る男。彼は、あと15分で世界は滅亡するといい、ここでジェンガを15分続けることができたら滅亡が回避できるという「"僕ら"と"ノストラダムス"の1999年の大晦日」(少年社中)。
首に巻いたマフラーのダサさ加減に我慢がならず夫の外出を制止する妻。夫は怪物を退治にいくのだという。押し問答を繰り返していると、近所の「怪物」が母に付き添われて訪ねてくる「血がみどり」(ぬいぐるみハンター)。
三姉妹。三女と結婚の約束をしている男が、次女にも手を出して三女の怒り心頭。父親は留守がちで一年間も連絡もないまま戻ってこない。母親はそれを待ち続けたまま死んでしまった。もうすぐ一周忌になる。母親の漬けた最後のキムチで鍋をしようとしたそのときに父親が戻ってくる「君とは無理」(トリコ劇場)。
美大、デッサンの授業。男のヌードモデルを前にざわめきながらもデッサンの進む教室。実技なしで入学して自信が ない女、中央でポーズをとる男が突然「運慶」に。ヒートアップする教室「model:unkei」(世田谷シルク)
重力という避けられない運命に翻弄され抵抗する人々「ミートくん」(田上パル)。
ベンチに座るホームレスの男。朝。顔見知りの女は大荷物で、東京に行くのか、と声をかけ「東京へつれてって」(Mrs.fictions)。

「僕ら〜」は、ノストラダムスの理不尽な要求に巻き込まれる人々、ジェンガはあっという間に失敗し、皆が殺され。最後の一人、提案された最後のゲームに勝った男、したかったことを叫ぶ、終幕。世界は終わらなかった、続く。テレビの男の最後のセリフが聞こえなかったので、そのあとのノストラダムスを名乗る男の「いい加減ですね」のつながりがよくわからなくて残念。繰り返す滅亡を示唆して終わる、逆ビューティフルドリーマー。ほかの団体に比べて決して若いわけではない彼らなのだけど、そこで勝てている感じがしないのは初っぱなのハンデを加味してもちょっと厳しい。

「血が〜」のぬいぐるみハンターは初見。サザエさん的家庭&ご町内ドラマを根底にしてヒーローものの物語に業界ドラマを足して、のワンアイディアがおもしろい。ふつうに暮らすヒーローとそうじゃない家族という枠組み自体新しい発想ではないけれど、そこにまるで友達の家に遊びに行きたい子供の姿のようにみせるのはちょっと巧くて、そのあとの来訪者が効いてきます。怪優の噂も名高い神戸アキコの破壊力はさすが。

「君とは〜」は、嫁に出たり家を出たりした長女次女、実家を一人で守る三女。三姉妹に言い寄ってきた男と、苦労したまま死んだ母親と出ていったきりの男。愛憎家庭ドラマという風情。舞台上で作り続けるキムチ鍋、ごま油で炒めて、という匂いの破壊力がすごい。男が本当にほしかった女は、という着地点のおもしろさと、三姉妹の母親が見える終幕がキレイ。 戻ってきた男を演じた成川知也はこういうしょぼくれた中年をやらせると巧くて、愛情をわかっていながら不器用な感じもちょっといい。モテ男を演じた芝博文がうらやましいw、キャスト交代を乗り切った小山待子も末っ子っぽくてかわいい。

「model〜」はスタイリッシュにみせる序盤がキレイ。 美大ってのがどういう場所か実感としてはわからないけれど、まわりがみんな巧くて自信をなくしかける女の子、という構図はたとえば西原理恵子の「上京ものがたり」などに通じる切なさがあって、それを重ねて勝手に涙するアタシはこの物語が大好きなのです。 文化祭でちょっと作ったアクセサリがかわいいと評判になって教室を開いたり、なんてのが美大を志した原点。こどものころに何かを誉められたり、何かをおもしろいと思ったから決めた将来、観客それぞれの中に思い当たる節があるというあたりでまたダー泣きするのです。 夢オチ、とするのが得策かどうかはわからないけれど、それが「芸術」を志しているもののこの時点の現実という終幕は地に足がついた感じでふわりとアタシたちの現実に軟着陸するのです。

「ミートくん」、重力に逆らうのはマッスルなんじゃないか、という野暮はいわない約束。これまでとは違う実験作だというけれど、重力という宿命という発想はおもしろい。やってること自体はドリフな感じなのは、それを越えないといけないわけでちょっと厳しい。

「東京〜」、よく描かれるのは東京という遠い場所へのあこがれと希望なのだけれど、今作ではもはやすいう高揚感すらないフラットな男。電車で東京まで6時間の距離のこの地元でホームレスしてきた失敗からシフトするために東京にいくのだというニュートラルすぎる感じは今の彼らの世代の圧倒的な絶望を感じるのです。彼女からもだったラブレター一つに打ちひしがれて小説家の夢をあきらめるという男のふがいなさも、ついていくけれど生活を夢見る女の強さの対比がちょっといいのです。

どれが、というと迷うけれどアタシは世田谷シルクの完成度の高さに惹かれます。

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