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2010.11.14

速報→「蛇と天秤」パラドックス定数

2010.11.13 15:00

38℃」の改訂版といいながら、結構体裁は変わってる感の90分。15日まで恵比寿ギャラリーsite。横に広い客席。OHPも見えるなるべく長辺中央を。公式忘年会の告知つき。オマケも楽しい。

大学病院が主催する結核についての市民講座。帰るように促されながらも聴講者に混じっているのは製薬会社の研究者と営業。この病院で少し前に連続して8人の患者がが死亡したのはこの製薬会社の新薬に原因があるとしたことに抗議するためで。

製薬会社と医者、たんなる金銭的な癒着ともちがう、新薬や治験といった一種の持ちつ持たれつ。病気を治したいといういわば絶対善は共有されているのに、なにかのネジがくるっている閉じた世界。

ネタバレ。※どうもアタシ別の作品の記憶と混同してたようです。2010.11.14朝に訂正しました(削除を取消線、追加を下線)。

初演では戦時中の秘密研究にSARSの大流行に発端を得て、いわば借景の上に作り込んだ感じでした。今作はずいぶん変わっていて題材を完全に変えていて、医者とか製薬会社のパワーゲームやしがらみをきっちり受け継ぎながらも、借景をきれいにそぎ落として、オリジナルな物語だけで構成しなおした、という感じがします。史実をタネにした芝居をみて、帰宅してからあれこれネットで調べるという楽しさは捨てがたいものの、史実を抜いたおかげで医者と製薬の暴走と、主従関係が絶対だったり内輪を守るという「人間のロジック」がもっとくっきりと見えるようになったというのは魅力です。

史実をもちだすことで、「ああ、731っていう狂気ね」「医者と呼ばれる人たちの閉じた世界の狂気、たとえば731的な」と思考停止に陥った初演時のアタシの感想(書いてないけど)が恨めしい。作家はそれをもう一段、「ということは」と掘り下げて普遍化し、「たとえば」と現代でも、あるいはSARSではない別の題材でも起こりうる物語に、なんてことを考えてしまうのは今週会社で聞いた「失敗学」なる講演を思い浮かべるからか。(で、その晩に失敗して自転車でコケるというオチつきで)。

もうひとつ、初演ではクスリとも笑いの起きなかったのが、わりと軽い感じに序盤を走り始めるのも、作家の語り口が、すくなくとも表面的にはずいぶん変わった印象を与えます。それでも描くのは、ぶつかり合う男たちの物語、という骨子は変わらないのです。

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