速報→「葬送の教室」風琴工房
2010.10.10 19:00
1985年の日航機墜落事故を題材にした物語は緊迫した一幕、芝居としても、一つの視点としても観ておくべき110分。13日までスズナリ。
事故から5年、現場の山を望む村。事故調査委員会の報告書が出ている。遺族会の一人は墜落時の航空機の乗客の安全をテーマにした講演会を企画する。その準備のために集まった人々。遺族たち、航空会社の社員たち、それぞれが一枚岩ではない。
あたしが受験生で夏期講習に通っていた予備校の教室でセンセイがいつまで経っても現れないな、と待っていたあの時間。あの頃から25年の今だから語れること、癒えるために必要な時間のひとつの区切りなのかもしれません。芝居でも「赤い鳥逃げた」や「CVR」という名作があるけれど、それぞれとは違う視点。
事故直後の混乱と癒しに必要な時間のあと。遺族といっても会社側の遺族、そこから次の事故での生存率向上につながる方向を考える研究者、チームとしての遺族会を維持することを優先と考える町工場の社長、航空会社から来たひと、航空会社に所属しながら遺族に寄り添おうと考える人、自分たちの失ったものから癒えきれていない夫婦、あの現場を見た医療関係者。外側の視点として、あるいは報道というものの問題を抱えた立場としての新聞記者。悪くいえばあまりに都合よく少人数にまとまっているそれぞれの代表だけれど、それを違和感として感じさせたりしないし、静かに語られる物語の確かな力は圧倒的なのです。
もととなった物語を自分のリアルタイムに重ね合わせられるのはおそらく30代から上。若い観客がこれを見てどう感じるかは想像がつきません。とはいえ、前半は一つの突破口に向けて、理性的に積み上げ、詰めていく物語と、どちらかというと、家族や想いといった情動に訴える物語が混在しているのは珍しい感じ。
山口雅義は、会社の代表としてここに居る立場の貫禄が圧巻。理知を積み上げて周りが見えないところもある研究者を演じた佐藤誓、この張りつめた空気を張りつめさせ続けすぎないように緩める岡森諦は実にいいのです。会社と遺族の両方の立場を一人で背負う清水穂奈美は派手さがないけれど、しっかりとした印象を残します。
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