速報→「大きな豚はあとから来る」渡辺源四郎商店工藤支店
2010.9.24 19:30
渡辺源四郎商店、工藤姓の作演・役者の女性3人のユニット、二回目公演は、女性の立場を変え主演の女優を入れ替えたYukako/Shizukaの2バージョンを交えて上演。アタシがみたのはShizuka版。80分。26日までアトリエグリーンパーク、来年1月2日-3日までアゴラ劇場でYukako版を上演予定。
キャバクラに訪れた男は、中東の小さな国の小さな島から人を捜しにきている。応対した女に再会した男は、実はもう一つのミッション、お妃を探しにきていて、彼女がその候補だという。
販売されている上演台本は、Yukako版の銀行員の設定を主にして、Shizuka版のキャバクラ嬢の設定の差し替え部分を後から補足するようになっていますが、それほど台詞自体に変化はないようです。魅力的なたった三人の役者。濃密な空気が楽しい。
静香版での主演、工藤静香(同姓同名の芸能人とは別人)は、キャバクラというには少々年齢がとか、露出が少なすぎないか、という意見もありましょうが(で、あたしはその実状を知らないけれど)、おもねるような、少しばかりものを知らないように見える、素直さが勝るキャラクタ作りが成功していて、主軸をきちんと。対する大林洋平はおそらく全く違う印象の二つの版を使い分けるちから。嘘くささと誠実さのぎりぎりのところ。
前回のA面/B面といい、今回といい、わりと自覚的に騙される女、ということを描いている印象の作家。前回公演は、青森という場所、さんふり横町という場所の力と物語ががっつり組み合っていて他ではそのままでは上演できない印象がありますが、今作は、地方都市ならどこでも上演できるような作りになっていて、30をすぎた女性の芝居としてポータブルなのはホンの強みだなとおもうのです。
ネタバレかも
当日パンフに作家が書いているのは、騙されること、騙すことの話。夢のような白馬の王子様、じょじょに、しかし外堀を埋めていくように、騙していく男。本国からの送金、為替の差益なんてぴんとくることがあっても、あるいはその国に行くこともかなわず、その王様の写真さえ見せてくれないという疑いの種は次々と。中盤に至ってもう一人の女(別バージョンの主役)がその構造を明らかにするけれど、それでも彼女は、わかっているとは思いつつ、立ち止まること引き返さずに騙され続けるのです。おもいかえせば、ハンバーガー屋で再会したときのコーヒー一杯に対しても金を払ってしまうということが起点だということがわかります。
タイトルは、中盤ぐらいで少し説明がありますが、東北で云われる「大きなねぶたは後から来る」というのがもとで、文字通り祭りの山車のことを云う意味に加えて、行き遅れた30代の女性に対して親戚から冗談めかして結婚を急かす、という意味合いの言葉なのだそうです。なるほど、結婚ということに揺れる30代を内包した枠組みとしてとらえると、これは女性の物語なのだということがわかります。
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