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2010.08.23

速報→「吐くほどに眠る」ガレキの太鼓

2010.8.22 14:00

ガレキの太鼓、華やかで濃密な女性ばかりの95分。26日までAPOCシアター。

女性の語り。優しいお兄ちゃんが居て子供のころから後をついまわっていた。中学にあがる頃、学校に行けなくなった兄は留学のために家を出ることになった。繊細なところがある父親と母親、残った彼女は、健気に家族を支えなければと考える。中学、高校とすすみ、恋もして友達も出来て、大学に入って、バイトして、社会人になり結婚して。

中央に少し高い台。その左右に大量に掛けられた衣装。 木崎友紀子が語る、女の半生。それ以外の役者は、その女も母親も父親も、兄もまわりの人々も役を入れ替え、舞台上で着替えながらその女の半生を追いかけます。人に聞かれて語っている風の女は、自分の半生を語りますが、何のためのインタビューなのか、ということはかなり後半になるまで明らかにされません。半生のところどころで見せる女の拘泥や一途、それぞれは小さなきっかけだったりするけれど、積み重なり年月が重なっていく様子。

子供のころの無邪気さ、兄が家を出るあたりの少し暗い感じ、高校から大学にかけての青春まっただなかな感じ。闇を細かく「さし」のように入れながらも、華やかな中盤までは実に楽しい。高校に入っての部活、バンド、彼氏への告白(やや前傾姿勢、という少女マンガのような細かな作り込みがちょっとすごい)への流れのあたりが好きです。 高校からの親友、ユミとのあれこれ。依存してしまって不安定な大学入学直後、披露宴での二人。そのユミが語る恋愛遍歴の波瀾万丈の楽しさ。

人が生きていく上では何かへのこだわりだったり、市場とする何かの考えなんてものがだれにでも多かれ少なかれあると思うのです。彼女の場合はそれが家族で、あるいは誰かに頼られる、という強いつながりへの依存。それは他人からみればときに滑稽だし、まわりは本人が思うほどの重大さを感じていなかったりもするけれど、そのささいなきっかけが、「事件」を起こす、という物語の運びの見事さ。これがなんせ90分に濃縮されている見事さに舌を巻くのです。

語りを一手に引き受ける木崎友紀子は確かな語り口、華やかなこともあったけれど、というある種の疲れを感じさせる表情の奥深さ、確かなちから。高橋智子演じる、親友ユミの恋愛遍歴はちょっとコミカルだけれど圧巻。北川裕子、上村梓、石井舞、菅谷和美、由かほるもそれぞれが子供から母親、ときに祖母に至るまで変幻自在で、全体の水準が高い座組となってこの物語をしっかりと支えるのです。

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