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2010.08.03

速報→「きみどりさん」東京ネジ

2010.8.1 18:00

東京ネジの新作。110分。1日までOFF OFFシアター。

その家の押入には、一人の老女が住んでいた。名前はきみどりさん。親子5人の世帯だが、血縁ではなく、行動もすこし度を超していて、妙だった。

いくら昭和だからといっても、アタシにとってはリアルには感じられない物語。だけれど、作家が当日パンフに「実際の」と書いていたり、アタシの友人がそれをリアルな体験として感じていたり、むかしの文章には時折垣間見える、きっとそこかしこにあった時代の残渣。もっとも過去の昭和42年の話として挿話される、「誰かを待っている」のは家族から捨てられた、もしかして男かもしれない、という、時代の薄暗さともいえるし、そういう人を同居させることの出来た時代のおおらかさともいえます。

血縁の祖母祖父の同居であれば、それは自分につながる「家族」が間違いなく存在しているという時代の縮図がそこにはあるのだけれど、血縁でもなく身よりもない老人が同居しているという状態は、必ずしも器用には生きられていない三人の兄弟たちには、一人で「人に迷惑をかけて」生きていくのではないかという未来の選択肢をリアルに感じさせる物語の背骨の一つは、アタシの気持ちを激しく揺らすのです。

佐々木富貴子演じる「きみどりさん」は終始ハイテンションのまま大声を張り上げ、小さい体で押入の上段に這いあがる姿は滑稽だけれど、何かの想いがそこにあって、居つづけているという姿、やがて押し入れに昇ることすらままならない、と時間の流れをきっちり。迫力さえ帯びてくるのです。小林至はスマートではないけれど一途に妻を気遣う夫を好演。小劇場のこの年代の役者になかなかみられない「疲れた中年」らしさの味わいにますます磨きがかかり目が離せません。佐々木なふみ演じる次女は、気ままで少々暴力的で情熱的で情にもろい。こういう役をやらせると本当に強いと感じます。

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