速報→「臭う女~におうひと~」野の上
2010.8.22 18:00
強烈な津軽弁で芝居を作る「野の上」。弘前劇場時代の若手公演[CoRich]を新キャストで上演。青森のあとアゴラ劇場での上演は22日まで。100分。
農家の庭先に集まる近所の主婦たち。青森県産にんにくの出荷の最盛期、外皮を取り、仕分けや計量をして梱包をしている。70になるのに働きに出ていたり、中国からの留学生として来日し結婚していたり、という女たち。近所の噂話、それぞれの夫の話まで、シモの話も含めて姦しい。
せりふの一言目から、津軽弁満載。弘前劇場や渡辺源四郎商店を通してなれてきているアタシでも強烈な「臭い」を感じるせりふ。まったく聞いたことのない人にどう感じられるのかは今一つ想像できませんが、少なくとも前半の話題はわりと軽めに作られていることもあって、ネイティブではないアタシにとってもやがて慣れるように構成されているように感じます。
近所のあの人がどう、という噂話から、手にしたニンニクを旦那のソレに見立てての屈託のない世間話。高価な農機具を売りにくるディーラーの営業やらさまざま。
ネタバレ
子供が減っていって、この土地での農業どころかコミュニティーが将来にわたって成立していかないだろうことが前提の世界。独りで死んでいくことを怖がり成人しているのに遊んでばかり居る孫にせびられるままに金を渡し借金を重ねている老人だったり、残してきた母親が気がかりで中国に戻りたいとは思うけれど、故郷の農村部に自分の子供を連れて帰ってもいいことはないと思い悩む中国人、あるいはせっかく子供を育て上げたのに亡くしてしまったりと、それぞれの女たちが生活と子供のことで悩み続ける姿は、まさに生活の、地に足のついた視点で語られている感じ。アタシ自身の生活に直接はつながらないけれど、コミュニティを維持すること自体が難しくなっていくという感覚は、身にしみる感じがします。
序盤で何気なく流される、「生まれすぎた子犬を川に流す」そこにおける日常の風景を、この物語全体を通して語られる子供たち、女たちの物語に重ね合わせる終盤は絶妙で強い印象が残ります。 中盤の救急車のシーンはドタバタとコントのようで、正直にいえば少々浮いている感はあるけれど、これもまた子供の話で底がつながっている感じ。
中国人の若い嫁を演じた三上晴佳は、前半でケタタマシく騒ぎ、絶妙の間で突っ込んで笑いをとりながら、故郷に帰りたいと語る終盤が実にいいのですが、座った場所が悪くて表情が見えなかったのは残念。同じシーンで諭すように語る役、工藤早希子の豊かな表情と、やさしい眼は引き込まれるよう。代表でもある乗田夏子は、おばあちゃんの領域をきっちり。前半の語りをともに支えるのは藤本一喜で、地に足のついた確かな台詞がきちんと発声されることの安心感。ディーラーの営業を演じた永井秀樹もびっくりするぐらい、きっちり津軽弁。耳に障らずなじんで聞こえるのはちょっとすごい。
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