速報→「あなたに似た人」mitsudomoe
2010.8.15 18:00
古川貴義、玉置玲央、須貝英のユニットのリーディング企画。80分。16日までSIMスタジオ。男二人女一人の三人芝居を俳優二人で、女の台詞を語らないという特殊な上演形態のため、台本を持ちながらあるいはあらかじめ読んでおくのを強く推奨。会場での販売(500円)の他、ネット上での公開もされています。
脳神経科学の学会発表。壇上の研究者はある精神疾患についての新しい知見を発表する。近親者のことを、そっくりなニセモノだと思い込んでしまうその疾患を人為的に作り出し、愛情などの感情と記憶のメカニズムに迫ろうという研究だった。その被験者となったのは、研究者の妻だった。
台本はフェーズ、と名付けられた場の番号が逆順振られていて、どうしてそうなった、という感じで時間軸を遡るように物語が進みます。中心を向いた三脚の椅子と机。一つの席は語られない女の役、他の二人は場面ごとに配置を替えていきます。表情以外の動きはほとんどなく、まさにリーディングでの勝負。
そこに謎があって、困難であれば困難であるほど突破口を探って右往左往しながらも先に進みたい、という研究者。振り返って俯瞰してみればそれは最初の目的とは違ったものになっているかもしれないけれど、それでもそれが新たな知見を生むと判れば試さずにはおられない、という、科学に携わるもののある種の業。そこからは一番遠い場所にあるはずの「愛情というものの解明」にかかろうとした瞬間のどうしようもない悲劇的な感覚はアタシの気持ちを揺らします。
三人という少人数、セットを作り込まない上演が可能で、たとえば鴻上尚史の「トランス」にも似たポータビリティと力のある脚本。魅力ある役者がシンプルに初演してというのは、脚本を丁寧に育てていくという意味である種のワークインプログレス。芝居を育てていくという過程の片鱗を味わうことの楽しさ。
正直にいえば、もともと三人用に書かれた芝居の初演を、一人の台詞を発しない、という特殊な上演形態で行うのは少々残念な気もします。台本の無償公開と販売を事前にアナウンスしているので責められるという程ではないのですが、初演だからこそ脚本のシンプルな力を味わいたいと個人的には思うのです。もっとも、一人欠いて始める、というのはパズルの最後の一ピースを探すということとも云えて、それはそれでいい企みだなとも思うのですが(どっちやねん>アタシ)。
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