速報→「対岸の花火」年年有魚
2010.8.21 19:00
年年有魚の新作。100分。24日までOFF OFFシアター。
小さな町の和菓子屋。店を訪れる人は居ないが、三代目を継いだ次男は、ネット通販で塩大福を三ヶ月待ちになるほどの人気にのしあげて、雑誌の取材は断るほどになっている。ある日、東京で美容師としてカリスマになっている長男が数年ぶりに戻ってきて、一緒につれてきた編集者の取材を受けるように云う。
女優の浴衣姿と帰省にからむいわゆる「田舎」の物語、夏休みらしい感じで季節にあっています。
実家の跡を継ぐこと、という男目線の物語を軸に据え、離婚して戻ってきた女や結婚を意識し始めた三男と恋人、あるいは従業員のほのかな恋心。長男が戻ってきて次男ともめたというだけで翌日には噂話になってしまうような小さな町。久しぶりに訪れた町は、自分が知ってる頃とは変わらないところもあるけれど、合併があったりして、様変わりしていく町の姿。あたしはそれほどまだ深刻には感じないけれど、生まれ育った町は間違いなく変化していくことは、歳をとればとるほど実感するのです。
東京に出ていった長男、跡を継いだ次男の葛藤があきらかになる後半のシーン。ちょっと出来すぎな感じがしないでもないのだけれど、長男が出ていったことや次男が頑なに取材を拒否する理由がするするとつながっていく感じは鮮やかです。
そこかしこに恋の物語をちりばめながらも、三兄弟の物語の一角をなす三男と恋人を以外はさらりと流した感じ。全体の印象も、どこかさらっとしている印象なのだけど、劇中語られる「薄味」を感じる才能みたいなもので、ああ濃い芝居ばかりみてるとこういう「そよぐような」芝居を感じる舌も鍛えなきゃなぁと思ったり思わなかったり。
全体を通して出ている印象の前有佳が印象的。松下知世は少しコミカルな方があっている印象。小谷美裕は恋人に半切れになるシーンがちょっといい。安東桂吾はちゃらちゃらしているようでしっかりとしたところを見せる終盤、カッコイイ。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「昼だけど前夜祭」劇団チリ(2024.09.16)
- 【芝居】「朝日のような夕日をつれて 2024」サードステージ(2024.09.08)
- 【芝居】「雑種 小夜の月」あやめ十八番(2024.09.01)
- 【芝居】「ミセスフィクションズのファッションウイーク」Mrs.fictions(2024.08.30)
- 【芝居】「氷は溶けるのか、解けるのか」螺旋階段(2024.08.27)
コメント
私も観て来ました。
こちらのサイトで昨年の年年有魚のてのひらに滲んだらの批評を拝見して興味が出たからです。
今作は作風が少し変わったと話に聞きましたが、こんな心あたたまる泣き笑いな作品を観劇する事が出来てこのサイトに感謝しております。
若い世代には物たりなさもあるかもしれないですが、私の様な子供もいる世代にはとても染み入る作品でした。、
作家の森下氏のもう少しどろっとした作品も体験してみたい物です。
団員の平田暁子さん、客演の小谷美裕さん、共に違う趣の華がありとても魅力的でした。
貴方の批評の最後、安東さんがちゃらちゃらしてしているようで…の続きが気になるところですが。
投稿: 鰆 | 2010.08.24 13:30
鰆さま、コメントありがとうございます。
新しい劇団との出会いってわくわくしますよね。少しばかりでもお役に立ててなによりです。
ええと、安東さんの云々の段落、実は表示されないように設定したつもりだったのですが、あれれ。
せっかくなので、おしまいまで書いて更新しました。ご指摘ありがとうございます。
投稿: かわひ | 2010.08.26 21:49