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2010.08.15

速報→「夜も昼も -Nigh and Day-」文月堂

2010.8.14 19:00

文月堂の新作。芝居の現場とバイト先という現実をのみこみつつ仕上げられた120分。17日までアゴラ劇場。中心やや下手側のほうが見やすいと思います。

芝居がしたくて高校を卒業後上京してきた男。大学には入らずに大学の劇団に潜り込む。メンバーが卒業し就職し抜けていっても主宰として頑張る。バイトはいつしか育毛剤の通販コールセンター。

小劇場の作家が芝居で喰っていきたいのにそうならないもどかしさを描くのは実際の所よくある題材ではあります。10年やってきたのに何やってるんだろう、芝居でもそれ以外でも何かを掴み始めた奴らも居るのに、芝居もままならず、社会人としても中途半端。自分はどうしてこうなんだろう、という想い。芝居が第一だから、バイトで働くことは「生活の糧」に過ぎなくて、死んだ目をして無茶苦茶なシフトを組んで、長いこと職場にいてもほとんど誰とも関わらずにやっていく、なんてぐあい。

冒頭に描かれるのは溢れるカエルの鳴き声。地方を象徴するものとして描かれるこのシーン、アタシにも実感として感じられるのです。カエルの声が聞こえるというのではなくてカエルの鳴き声の中に沈んでしまうような感覚が、都会としての東京からの距離を実感させる、というか。

このカエルのモチーフ、作家はその一歩先に踏み込んでいきます。その溢れる鳴き声をコールセンターの喧噪に重ねていく作家の真意はよくわからないけれど、アタシは志しているはずの芝居からの遠さと、生活の中に埋没してしまいそうになるということを描き出したいのだろうな、と読みます。

小劇場の役者の生活をダメさ加減で描くのはリアルかどうかはわからないけれど、男女がくっついただの離れただのということと、カネの問題がからみあっていくというのはまあ、きっとそうなんだろうなと思わせます。コールセンターの方は、社員、契約、バイトのいろんな働き方に、生き方だったりマイノリティーだったり、そこまで派手なことじゃなくても、新人の研修や休憩室のやりとりなどと、人間のふくらみ方の幅がさすがに広くて、腑に落ちる感じ。作家が実際に目にしたことなのかどうかは知りませんが、観察と構成のちから。

藤原よしこは、二つの場面の両方で大量の台詞を駆使して場面のリアルさを作り上げます。特徴的な声が印象的。辻久三はコールセンターでの「引き継ぎ(このこと自体のリアルさはともかく)」にまつわる場面が強い印象。諦めと優しさが入り交じるこのシーンが好きです。

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