速報→「反重力エンピツ」国道五十八号戦線
2010.7.24 19:30
作家の急病により新作から変更して2009年8月初演作を再演。役者が変わってもびっくりするほどきちんとハマる110分。8月1日までサンモールスタジオ。開場中には対角線に並んでいる椅子の延長線上ではない場所の席を。
アパートの一室らしい部屋。女をモデルに坐らせて男はイーゼルを据えて小説を書く。同じ部屋、集う人々は学生運動の人々。カレーという隠語で呼ぶ爆弾を仕掛ける新たな行動。少し前にも試みたのだが、内部の分裂で未達に終わっている。満を持して今回再び行動を起こすが、こんなに少ない人数なのに内部ではいくつもの対立が芽生えている。
今作に限らず、実は芝居の物語や細部の記憶ってものがびっくりするほどダメなアタシ。今作でも、 イマサラの学生運動の話、イーゼルで小説という印象的な構図は覚えていても、いくつかのどんでん返しを含め、覚えていないのだけれど、観ている最中に鮮やかによみがえる記憶。
企業とか団体とかいうものは何かの目的遂行のためにあるはずなのに、今なお実らぬ学生運動、政治活動、潰しあいのゴタゴタ。これもまた集団というモノの一つの側面だけれども、その閉塞感。潰しあう男女二組、その背景は後半で語られますが、カップルが、ということではなくても、現実のいろんな集団で日常的に目にすることをきっちり描き出す作家の目は確かなのです。
男女二人、モデルとスケッチしている(というか文章を書いている)風景と、学生運動のアジトと化している女性一人のアパート、二つの場面が描かれます。どちらが他方を内包しているのかということは、明確には語られません。アタシは部屋に集まる人々がベースとなる現実の物語で、男女のスケッチのシーンは女が想い描く世界だと感じます。
彼女には、たった二人でバカ話したり突っ込んだりしながら彼の思い描く世界が見えて、自分が溶け込んでしまって、その世界を本当にほしいと想う世界。(学生運動の)現実のシーンでは、この二人、ほとんど会話を交わしません。男は本作戦のリーダーだけれど、女は部屋の主ではあっても、言葉を発することすら稀で、でも彼らを追い出すこともありません。
終幕でその彼女がとる行動はあまりに唐突でファンキッシュ(という言葉があるかどうかしらないけれど)。初演観たときには、それをすっぽり見落としていたけれど、今回感じた補助線の上に載せてみると、それは実に筋が通っていて、腑に落ちるのです。
少々幼い感じに見せる男たちが楽しい。対する女優陣の力も圧巻。アタシの嗜好は別にしても(笑)、衣装や所作、ポーズのさまざまが「男を動かす為のオンナ」をきっちり、ああ、なるほど、歴史は世間はこうやって動くのか。堀奈津美は、コントロールするような強さをしっかり。岡安慶子は初演と同じ役だけれど、おもねる声で甘えてコントロールする力。ハマカワフミエは物語の真ん中の軸なのです。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- R/【ホギウタ】ブリキの自発団P(1999.10.15)
- R/【寿歌】プロジェクト・ナビ(1996.09.21)
- 【芝居】「ヨコハマ・マイス YOKOHAMA MICE」神奈川県演劇連盟(2025.04.15)
- 【芝居】「フルナルの森の船大工」タテヨコ企画(2025.04.08)
- 【芝居】「ここは住むとこではありません」TEAM FLY FLAT(2025.04.07)
コメント