速報→「元気で行こう絶望するな、では失敬。」パラドックス定数
2010.7.3 15:00
パラドックス定数の新作。三鷹市芸術文化センターが続ける太宰治作品をモチーフにしたシリーズ上演。高校同級生20名を巡る物語はいままでのパラ定にはないテイストで新しい局面を見せる120分弱。4日まで三鷹市芸術文化センター星のホール。
田舎の男子校、20人のクラスメイトたち。子供を孕ませたり、親の借金をめぐる気まずさがあったり、いじめがあったり、いたずらがあったりの当たり前の男子校的な日常だった。が、あれから18年経った彼らの記憶はそこで止まっていて。
前回の三鷹はたった5人だった空間に一挙に四倍の人数。さわやかな高校生活だったり、リズムが取り入れられていたりと、いつものパラ定の作家のテイストだとおもっているとちょっと違う印象があります。空間を埋めるもう一つのやりかた。
アタシ自身の体験とは少し違うかんじだけれど、高校生男子たちの、疾走するようなスピード感と、ばかばかしい感じ、年上にもてあそばれたり、一方では別の女子校の生徒たちのパンツをみようとする幼さの同居。「田舎の高校生」という設定がうまくきいています。女性の作家らしく、汗くささのようなリアルを丁寧にこそげ落としていて、かといってBLのようなステロタイプな夢想に走るでもなく、 丁寧なしかし妄想する教室の風景が心地いいのです。
なるほど、これを平田オリザ「転校生」や空間ゼリー「ゼリーの空間」のような女子高生たちの物語としてではなく、(過去を振り返っている構成とはいえ)男子高校生たちの繊細な話として描くというのはほかにみない感じがします。
それは男を描き出すことに対して圧倒的な力のある作家の力はもちろんあるのだけれど、太宰治という人物のある種の幼さだったり、やけに女性にモテる感じだったり、覚悟した強い意志としての死ではなく、あっさりと「スライドする」ように一線を越えてしまう感じだったりという儚さを、作家は見いだして高校生たちの物語として描き出すちからに舌を巻くのです。
社会人になってからとして描かれる後半は、パラ定らしいメガネとスーツの人々。前半のおかげでこの人物たちの判別も容易なのはいい副産物。二人だけ高校生の頃の姿でい続ける役が強烈な印象を残します。生きていること、いなくなってしまったことの曖昧。物語ではそれを想い続け過去に捕らわれている男の話に落としこまれているけれど、客席に向かった群唱は、客席にいるアタシたちに「向こう側にいかないこと」を強く訴える感じになっています。パラ定らしくはないけれど、こういう時節だからこそ、あえてその強い想いを表出する今作は気持ちを強く揺らすのです。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「静流、白むまで行け」かるがも団地(2023.11.25)
- 【芝居】「〜マジカル♡びっくり♧どっきり♢ミステリー♤ツアー〜」麦の会(2023.11.25)
- 【芝居】「未開の議場 2023」萩島商店街青年部(2023.11.19)
- 【芝居】「夜明け前」オフィスリコ(2023.11.19)
- 【芝居】「好男子の行方」オフィスリコ(2023.11.12)
コメント