速報→「2番目、或いは3番目」NYLON100℃
2010.7.18 14:00
ナイロンの新作。19日まで本多劇場。そのあと名古屋、大阪、広島、北九州、新潟、いわき。休憩15分込みで205分。
何かがあって、破壊されてしまった町。その町に何か援助ができないかと5人の来訪者たちがやってくる。自分たちの町も復興を待っている状況なのだが、ここに留まり援助をしようとする。が、建物こそひどい状況だが、水も食べ物も自給自足が可能な程度には確保できていて、なぜか町の人々は笑顔さえこぼれている。
自分たちより悪い状況のところを探し援助するという形で自分たちが救われるという一種のエゴのはなし、とまとめようと思うとそれだけでは終わりません。わりと飽きずに長い上演時間を見られるのに、なにか感想にしようとすると、一癖もふた癖もあって、一筋縄ではいかない感じ。何かの教訓とか、何かを教えてくれるという感じではなくて、そこにいる人たちを少々意地悪に、そしてコミカルに描き出して、人間ってものの愚かさだったりある種の悲しさだったりを丁寧に描き出します。
もと劇団の、という少々無茶な注釈付きで展開されるチェーホフ風の衣装と雰囲気は、しかし結果的にちょっと意味シンで効果的。帰る場所のないこと、救いのないことを薄々感じていても、その先の希望を口にするせりふ、というのはアタシの感じるチェーホフっぽさの感じによくあっています。
上演時間の長さは、おそらく本筋とは違う枝葉をたくさんもってるためで、それは一見無駄なようだけれど、結果そこにできた「虚構の世界の強固」さに舌を巻きます。
正直に言うと、前半のゆるい感じの町の裏側が見え始めるあったりからのあれこれは少々唐突な感じを受けます。特に小出恵介演じる若者の豹変がいちばん落差が激しく、衝動的に過ぎる感じ。もしかしたらアタシが何かを見落としてしまったのかもしれません。
大倉孝二演じる老人が笑わせるぼけ倒ししまくるなかに時折深そうなことばを織り交ぜる感じ。役柄もあって全体に客席が沸く場面が多く今作においては圧倒的に強い印象を残します。とくに老夫婦の終幕シーンは、軽々として深さもあっていいシーンなのです。
三宅弘城演じる来訪者の男と、村岡希美演じる町の娘の恋心な物語はベタではあるけれど、同列に提示される若者たちの恋が恋心というよりは衝動に近いように描かれるのに対比して、牧歌的ですらあって、ほっこりする感じ。ナイロンっぽくないといえばそうなのだけど、これはちょっといい感覚。
ここ数作でタイトル部分の映像の処理が圧巻なのは本作においても。かつての町の姿をベクタグラフィックで描き出すタイトルの映像がちょっとすごい。おそらく映像として残るものよりも、あれがセットと組合わさって現物として見えることがより強い効果を持っているように思うのです。
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