速報→「エラーメッセージ」tea for two
2010.6.20 13:00
喫茶店で語るような小さな空間での会話を標榜するtea for twoの新作。三つのシチュエーションをゆるやかにつなぐ三人芝居三本立て。
医者は急性腸炎と診断するが心配性らしくもっと大きな病気を隠しているのではないかとあれこれしつこく問いただす。血圧検査で話した看護師は、その医師が話すときにないようによって変わる癖があるのだと耳打ちする「第一幕」
殺人事件の容疑者として拘留されている女。弁護士は夫の古い友人ですぐにでられると話す。面会の手続きに時間がかかりそうだからと、女は夫から手紙がほしいと弁護士に託すが、せっかく夫が書いた手紙を弁護士がなくしてしまう「第二幕」
論文が海外の有名な賞の候補にのこったと知らされた若い女性の研究者。殺人事件現場でたまたま報道映像に映った見物人の中で犯人と名指しされた女性は容疑者とされている人とは別人だった。テレビ局のディレクターは、研究者には研究を知らしめるためにと説得し、誤報の被害にあった女性には訂正報道のためと説得し、それぞれにインタビューの録画を設定する。「第三幕」
彼ららしくゆるやかにつながる三つの物語。最初の二つをベースにして、そのステージの外側で起きたことが一点で交わるような感じ。お互いの構造を強く拘束するような感じではありませんが、ちょっと洒落た感じ。
第一幕、不安な患者が質問責めにする医者の「癖」がキーになって、「訊きたいことをその癖を使って引き出す」質問のやりとりのあたりが会話の芝居の圧倒的なおもしろさ。そのあとに母親の想い、のようなことも語られて物語の決着をつけますが、そこよりも、その質疑のやりとりの会話にこそ芝居らしくて印象的です。
第二幕、ひとつのほころびが強固なはずの年上女房の夫妻の関係を崩していく、その背景となる夫婦が隠したかったことがあからさまになるけれど、その秘密の「しょぼさ」加減と殺人事件の容疑者であるということのギャップ。結局のところ紛失してしまった夫の手紙の代筆というエラーがえらいことになってるという意味ではタイトルの「エラーメッセージ」に一番近い感じ。
第三幕、二つの物語をゆるやかに背景に引きながら、容疑者の誤報と、いわゆる見栄えのいい美人の研究者をスターに仕立てるようなテレビ局のあれこれ。いわゆる祭り上げること、あるいは誤報を巡るテレビ局やマスコミの問題点を物語の骨格に据えながら、あくまでも作家はこれをエンタテインメントの味付け以上には踏み込みません。追い込まれる誤報された容疑者の暴かれ方が見応えになるはずなのだけど今ひとつ腑に落ちません。どうもテレビ局のインタビュアーの慇懃無礼が先に立ってしまって、そこにばかり腹を立てながら聞いているアタシが単純すぎるんでしょうが。
容疑者だという誤報に対してのインタビューを通して暴かれる謎ときは、物語の構造として鮮やかなのだけど、どうにも違和感が抜けません。物語の結果オーライとして描かれているようだけれど、最初の誤報は誤報なのに、そこがうやむやになる描かれ方に大きな違和感を持つのです。エンタテインメントとしての物語にはどうでもいいことかもしれないけれど、そこまで執拗に描かれてきたテレビ局のひどさ、に乗っかったアタシの気持ちはどこに持っていけばいいのだろう、と思ったり思わなかったり。
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