速報→「裂躯(ザックリ)」乞局
2010.6.19 15:00
久しぶりに拝見した気もする乞局の新作。10周年を迎えて家族をテーマに据えたシリーズの始まりとなる110分。 21日まで笹塚ファクトリー。
家族から離れて改装した古民家に暮らす人々。それぞれが家族への何らかの恨みを持ち復讐の機会をねらいながら生活している。それぞれが長男次男長女次女などの役割を毎日取り替えながら、長男の役割からの指示でその日の生活を決めている。
ある日、この生活の発案者の女が突然出かけて丸二日後に戻ってくる。彼女は実の父親と母親に監禁し、自分が生まれてからこれまでの生活に何一つ楽しいことなどなかったということを反省させるためにつれてきたのだ。復讐の第一歩が始まる。
漠然とした世間に対する不安から生まれるであろう人々の悪意を描くのが得意だった作家も、当日パンフであかされたように結婚や子供ができたことの生活の変化も一通り終わり、安定している印象。えぐいほどの悪意や汚さを押していたのが彼の作風だと思っていたのも昔のこと。生活の変化が、幸せの物語につながり、少々作風が丸くなったかと思えるかもしれません。確かに表面的なとげとげしさは薄れたともいえます。でも、やはり彼は将来に対する漠然とした不安から逃れられずに物語を紡いでいると思うのです。大学卒業の頃はそれが生活だったとしても、今作は劇場でお見かけすることも多い作家の子供が育ったあとに「自分がどう思われるか」ということに対する不安というかネガティブな想像力が圧巻なのです。
全体の要となる中島佳子はジャージにスーツとオンステージ、まさかのどんでん返し、あるいは序盤の意味のないセクシーポーズとファンとしては楽しい。石村みかが演じた妻の、封建的で「おもねる」感の妻は現代の若い女優が演じるには感覚として相当に違和感があると思うのだけど、笑いになってしまうギリギリのところで踏みとどまる力の確かさ。もう一人の妻を演じた西田麻耶はむしろ積極的に笑いをとる造形で後半のかき回しのポジションが圧巻。
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