速報→「恋女房たち」青☆組
2010.6.5 19:30
青☆組の短編アソートレーベル、「Million Blue」の二回目。一回目の中の一本「恋女房」(15min madeでも上演)を核に、「女房」にまつわる6品。8日まで100分。全日程が完売のようです(当日券あり)。
保険の営業が説明に来た夏の日、幸せそうな家庭には妻「たち」が。「恋女房」
朝のゴミ捨て場、主婦たちの井戸端会議も始まる。規定では透明な袋しか許されていないけれど、昨日からここにある黒いポリ袋「燃えないゴミ」
食卓に座る男女。簡単な料理のはずなのに、まったく違う代物がでてくることに落胆し怒る男。「スープの味」
雨の夜、近所の公園で缶チューハイを飲んで帰宅したOLの家には一人暮らしの筈なのに、「女房」が居た。
待ち合わせた若い男女。少し遅れて現れた女の小指には「赤い糸」
出歩いた老婆が転倒したにもかかわらず無傷。呼び出された兄弟親戚たち。奥で母親は寝ていて四方山話をしつつ。母親が起きて現れる「末永い夜」
「女房」にまつわる6編を7パートに分けて上演。 短編としても本公演としても上演済みの「恋女房」はもはやスタンダードの味わい。とはいえ、SFチックな設定や「女房たち」の諍いなど今回のラインナップの中では笑える要素もたくさんあって楽しくてキャッチー。
「燃えない〜」は物語の舞台としては珍しい気もするゴミ捨て場に集う女性たち。ある種の井戸端、男が入りにくいという雰囲気もらしくて、ちょっとおもしろい。当番なのに遅れて現れた新婚の妻に対して緩やかに笑顔な人々なのに、それぞれが背中に隠し持つ思いの重さは一種ホラーでもあって、凄みに圧倒されます。
「スープ〜」はだだっ子のような夫、作ったスープが不味いといい、延々のせりふ。古い時代っぽい芝居を書くとはいえ、こういう理不尽を物語に乗せることはしない作家なのにあれれと思っていると、なるほど後半での種明かしというかどんでん返しが鮮やか。料理ってものをすること、それは自分の栄養でもあるけれど、誰かの為という想いで変質していくということがぎゅっと凝縮していて、ほっこりするけれど、怖くもあって。
アタシの一押しは「押しかけ〜」。木下祐子には珍しいOL役が可愛らしく色っぽい。近所の公園で呑み、猫と話、疲れて帰宅した感じ、独りの寂しさ、誰かが居ることのうれしさ、職場で微妙に浮いている感じ、男の影。年代らしい女性の切り口がしっかりと隅々まで行き届きます。 「結婚できない女の独り語り」の芝居が大好物なアタシですが、そういうアタシの性癖を差し引いても、役者といい物語といい充実の一本。凛としていたり気の強い、という印象の木下祐子をこういう「女性らし」く使うのも珍しくて、でもそれは圧倒的な色気もあって。 物語の強みは「女性が家に帰ったら女房が居た」というワンアイディアなのだけど、発端のおもしろさに甘えることなく、最後の関係の提示もきちんとどんでん返し。途中挿入されるOLたちの、いわゆる給湯室とか休憩室でのとりとめない会話の密度も詰め込んだ感じがうれしい。
6本の中では唯一結婚前の物語の「赤い糸」もワンアイディアの強み。ごく短いはなしだけれど、こういうことがあったら、というSFっぽさ。赤い糸をあっさり、というのも楽しい。10代後半くらいからの男女二人で上演できそうなポータブルな一品で、あるいは年齢を重ねたら別の味わいもありそうでいろんなキャストで見てみたいのです。
もういっぽんSFっぽい「末永い夜」こどもたちの会話、母親のために集まったところに現れる母の姿は変わっていて。可愛らしい母親の無邪気さと物語の深刻さの対比が鮮やか。なるほど終幕にふさわしいけれど、親戚とか血縁という言葉が思い浮かぶ確かさがあって強固な物語。ひとり嫁という立場の女性の微妙な距離感も絶妙。
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