« 速報→「ここまでがユートピア」あおきりみかん | トップページ | 速報→「ただちに犬 Bitter」どくんご »

2010.06.16

速報→「よせあつめフェスタ」あまうめ

2010.6.13 16:00

twitter発の演劇企画公演。たぶん、同じ盛り上がりは再び作れない、一期一会。ミラクル3回を満員に。クオリティには役者としても演目としても正直バラツキあるけれど、平均すれば水準以上といえる90分。13日のみ。 (公式サイト、いきさつのまとめwikifringeの記事、togetterまとめ 1,2,3,4)

脚本は1本を除き既存のもの。その意味で一種の担保はされています。短編をコントライブのようにすることで、見やすくて、おまつりらしい仕上がりに。

関村脚本は、ホンの圧倒的な力のわりに、どうしても「あひるなんちゃらの、誰か」が透け見えてしまうのがちょっと気になるのだけれど、おそらくオリジナルの「あひる」を見たことのないだろう役者たち。役をつけたのも写真だけで決めたよう。演出をするといってもきちんとした訓練は出来ないわけで、おそらく役者の素材を行かす方向に。結果、役者の実力や向き不向きが如実に表れてしまうのもまた事実。ああ、また見てみたいなと思う役者も居るし、ちょっと好みじゃないな、という役者も見られるというのはこの手のアソートでの観客の気楽な楽しみ。

16時の回に設定されたのは演出自らの前説タイム。あひるなんちゃら風の携帯電話の電源、うっすら注意。MC、オープニングのビデオ、MCは昔のテレビ番組へのつっこみ、テレビ探偵団から続くタイプではあります。

演出はすべて関村俊介(あひるなんちゃら)、記載のない作品の作も同様。

■「ツイッター」(岡安慶子@北京蝶々 三原一太@はらぺこペンギン)
社長と社員、二人の会話の。たぶんこれが新作。twitterを題材にしながら、小劇場界隈でのtwitter有名人岡安慶子を当てた本作は、この企画全体のどこか夢のようなこともゆるく説明している感じの仕上がり。三原一太も圧倒的な安定感があって、今作の中ではもっとも関村脚本のいつもの感じに近いリズムで仕上がっていると感じます。

■「明日パイトなんだけど」(堀雄貴@犬と串 さいとう篤史)
なるほど関村脚本らしい。日常のゆるい男子二人の会話。帰りたい、帰れないのはゴドーかよと思いつつも、この脱力具合が楽しい。

■「ゴーテンノーペ」(菊地奈緒@elePHANTMoon 本山紗奈@荒川チョモランマ 湯舟すびか@市ヶ谷アウトレットスクウェア)
15 minutes made vol.4での作品の再演。あの番組らしく、店での座り場所を延々席位置を気にしてる感じとか、友達でもないのにやたらにディープな話にいきなりなっていく不自然さを笑う感じ。貸し切りの店の料金が、シアターミラクルより高いじゃねえか、というオチがおかしい。湯舟すぴか、本山紗奈のぼけ倒しもおかしいし、常識人なのにそれを抑えきれないという役どころの菊池奈緒も、ちょとらしい感じで楽しい。

■「隅に置く」(石井舞 西恭一@The Soul Beat Ave. 松木美路子@風琴工房)
脚本:三谷麻里子
つめきりの2004年2月上演のオムニバスの中の一本(初演時は「おいとま、もしくはおあいこ」)。 多少の切なさと、だらだら生きてるようにしかみえないお姉ちゃんと姉妹の喧嘩の他愛なさ、少しの切なさとか、「おぎやはぎのように」という意味のわからない憧れという絶妙のバランスがこの作品のキモ。メールで「死んでしまえ」を送りいつそれを思ったのか思い知れ、と云ったり縦書きにしてある無駄な細かさの描写も好き。

この作家の書くものがことごとく好き、というアタシの性癖を差し引いても、このバランス感は実に面白い。がもう風琴工房ではまずありえない等身大の女性をコミカルに演じた松木美路子の新たな魅力、石井舞も安定していて、「できた妹」を好演。

■「あさはかな魂よ、慈悲涼い雨となって彼女の髪を濡らせ」(筧晋之介@エレクトリック・モンキー・パレード 寺井義貴@ブルドッキングヘッドロック 堀越涼@花組芝居)
脚本:櫻井智也(MCR
花組の圧巻のちから。 ホンの力はともかく、これは役者の力に依存するポジションがあります。堀越涼は圧巻で、全体をきっちり引っ張る安定感。 家族と病気と愛情の切なさと笑いが同居する話。切なさが行きすぎるギリギリの処をきちんとねらっている感じは、ちょっと作家の力を見くびっていたアタシなのです。

■「赤い石」(堀川炎@世田谷シルク 金丸慎太郎@国道五十八号戦線/贅沢な妥協策)
♂本番ナシ♀の2008年8月上演のオムニバスの中の一本。 関村脚本としてもかなり不条理度の高い今作。繰り返し見ると、そこに見えてくる、同居する男女の機微というか想いが力強く描かれていて、もはやスタンダードの味わいすらあって、これはいろんな役者で見たい気もする反面、役者の力がもっとも如実に表れてしまう一本という気がします。 全体に不機嫌というか無表情で話す堀川炎演じる女が、石を捨てた瞬間に見せる満面の笑みが可愛らしくてとても印象に残ります。

お祭りとしての瞬発力、担保された脚本と揃った役者。制作チームもかなり優秀でこれだけのものを形にしたというのはすべてのスタッフや出演者の火事場のバカぢからの結集。偶然もあるし、首謀者の関村俊介らの静かな、しあかし大胆でバランスのいい感覚に裏打ちされているところもあります。二匹目のドジョウはそのままの形で同じような成功につながることはないと思います。何より芝居のクオリティの担保が難しい。もっとも、クオリティの担保が出来ないのは、インプロなどでも同じで、その一点だけを取ってダメだと決めつけるのには少々惜しい感じがします。

普通だったらオーディションをして、劇団やスタッフが選ぶキャストなのだけど、今作はそのいきさつからも、早い者勝ちで役者を選んでいます。それでも成立させるというのは並大抵ではないけれど、結果、バラエティに富んだ役者だったり、今まで知り得なかった役者を知ることが出来たのが大きな収穫。なるほど、これが縁かなと思います。

それよりもあの手この手の制作ツール、関係者が何を思って行動していたか、ということはちょっと知りたい気もしていて、そういう個別のノウハウが次につながるだろうということ、twitterとという場所で公開されるということが、この公演の大きな意味だったと思うのです。

|

« 速報→「ここまでがユートピア」あおきりみかん | トップページ | 速報→「ただちに犬 Bitter」どくんご »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 速報→「よせあつめフェスタ」あまうめ:

« 速報→「ここまでがユートピア」あおきりみかん | トップページ | 速報→「ただちに犬 Bitter」どくんご »