速報→「組曲『空想』」空想組曲
2010.6.19 19:00
空想組曲の新作。過去のストックや新作とりまぜて、14の断片から描くアソート120分。22日までOFF OFFシアター。日替わり短編が一日あたり一本含まれるので20もの短編からできています。
初めてのデートらしい若い男女、場慣れしない隠れ家風のレストランで、どうにもぎこちなくて「静かな晩餐」。
地球最後の男は部屋にこもって本を読む。扉の外からノックをしたのは「地球最後の男」
男との待ち合わせ。遅れているのに連絡もこない。もういい独りで生きていくと決めた。「恋愛論、クニコの」(日替わり短編, 19日)
この店でのデートも繰り返してきたらしい男女、そろそろ婚約かと期待する気持ちの女。でも、どうにもそんな感じにならない。その気がないのかきっかけが掴めないだけか「賑やかな晩餐」
女の家に来てゲームをしている若い学生らしい男。カードで勝った相手が言った行動の指示か質問に必ず答えなければいけない。年上の女性にあこがれているらしい男、女の夫は今日は戻ってこない「アクション、ヴェリテ」
ある店で店員を射殺し、人質の男をとって立てこもった男。人質はどうにかこれ以上の殺人をやめさせようと説得を試みる「彼に似合う職業」
いじめられがちな女の友人ベリーは、恨みに思っている誰かを確実に殺してくれる。「ありがちベリー」
そこに来た二人は、必ず恋に落ちる「ファミレス・ランデブー#1, #2, #3」
新婚らしい夫婦。男も忙しいが、妻は自分の書いた文章で出版してもらえるかもしれないといい夫もそれを応援していたが「時をかける晩餐」
ごみの広がった部屋にすむ女。男が訪ねてくる。男に好意を寄せている女がゴミ袋から探していたのは「サンクチュアリ」
演奏メンバーの中で独りだけ音のはずれる男、指揮者との居残り練習で曲を見事に習得して「ロマンチック主義者のためのささやかな演奏」
完全に冷えきったらしい夫婦。妻はこの場所に来ればあのときの優しい気持ちで話ができるかもしれないという一縷の望みを託して「静かすぎる晩餐」
「~晩餐」シリーズは、恋愛のゆりかごからある種の墓場まで。ちょっと甘酸っぱい初デートを描いた「静かな~」が好きというか、一連のシリーズの中で経験してるのはここ までなアタシ(泣)。 とはいえ、重大な告白を前にした駆け引きというよりは内的葛藤を緻密にしかし コミカルに描く「賑やかな~」は爆笑編に仕上がって、しかもちょっとわかる感じが楽しい。 もう少し時間がたっての、同じ人間とは思えないぐらいの心的変化を二人の役者に 演じさせる「時をかける~」はほろ苦く、あのときの気持ちを思い出したいという 一心で妻がこの場所を選んだという「静かすぎる~」はあまりに悲しい。その最後に、 絆創膏を渡す、というほんのわずかな優しさに涙するのです。まあ、できすぎたと いえばそうなのですが。
「アクション、ヴェリテ」はブラックな風味をまぶした、若い男と年上の 女の恋の物語で、かなり色っぽい雰囲気にやられます。「サンクチュアリ」は ブラックと云うよりは気持ち悪さが先に立つけれど、好きだと思う気持ちの ゆがみ具合を丁寧に描いています。
「彼に~」「ありがち~」はこの中ではかなり異質で、しかもやりっ放し感も あって、短編集だからこそ成立させられる感もありますが、ぎりぎりの心理戦の 「彼に~」の迫力にびっくりし、「ありがち~」のぶっ飛んだ無茶さ加減にわくわく します。
「ロマンチック~」は台詞無しの動きと音楽だけの少々コミカルで ロマンチックな一本。箸休めというか、こういう優しい気持ちになれる ものもこれくらいの短さゆえに楽しめるというところも。
「ファミレス〜」はワンアイディアを変奏させていく感じ。こいけけいこの女王様キャラは珍しく、新しい一面。ハマカワフミエが出てきていきなり「お客様の中に私の運命の人は居ませんか!」と客席に呼びかけるのはあまりに卑怯、手を挙げてしまいそうに(笑)。
しかし、この日最大の衝撃といえば日替わり短編の「恋愛論~」 小玉久仁子という役者がいて初めて成立するし、彼女のキャラクタとしては わりと見慣れた物ではあるのだけれど、それを突き詰めてこれでもかと 凝縮していくとすんごいことになる、という好例。この日の演目の中では 唯一、この一本の直後に客席から拍手があがるだけの迫力とおもしろさが ぎっしり。
間をつなぐ中田顕史郎のウエイターが、少し洒落ていて、コミカルで、 静かな役者の魅力を存分に。もはや空想組曲の番頭のよう。います。全体的に 冬っぽい感じの恋の物語が多く感じることもあって、クリスマス恒例だった 遊◎機械全自動シアターの「ア・ラ・カルト」にも似た風情。クリスマスに 上演するととてもいいなぁと思う構成なのです。優しくなれたり、ほろ苦かったりという恋の物語を骨格に持ちながら、この構成じゃないとしても、さまざまな役者で見たいとも思う魅力にあるバリエーションなのです。
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