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2010.05.03

速報→「アンポテンツ」チャリT企画

2010.5.2 14:00

チャリT企画の新作。アタシは未見ですが、2月に初稿でリーディング公演したものを改訂した90分。2日まで王子小劇場。

大きくそびえる門と壁。その手前のところで待つ人々。あるもの門の向こうに肉親が居てたまに訪れる。あるものは職にあぶれ、希望を求めてここで誰かを待っている。門はいつ開くかわからない。一日に一回開くこともあるし、一週間も開かないこともある。門を開けとデモの学生が通り、門の向こうの親友のためだったり、何かの為に門を越えようと人々が後をたたない。

小劇場の持つちからの一つに、今世間で起きていることを鋭く切り取って見せるという力は確かにあると思うのです。その最有力を一貫して占めている彼らの新作。安保そのものというよりは、日本の安全保障がまたひと揺れしている今だからこそ、この芝居はかっつりとはまるのです。

いわゆる安保を門にたとえ、深く考えずにその中でぬくぬくくらす世間。門の向こう側ではどうも戦闘が起きているのは知っているけれど、大多数には関係のない遠い世界の話、ここの暮らしを平穏にしていくためには深入りしない、守ってくれている「門番」に感謝こそすれ、疑うということはしない、という枠組み。それは、今のアタシたちが囲まれてきたこの国のこの時代のありさま。

向こう側のマスコミの報道はこちら側のそれとは違うようだということは知っていても、チャリTはさらに一歩踏み込んで、僕らが危険で脅威だと思っている向こう側はほんとうにそうなのか、というところに踏み込んでいくのです。中立で僕らのことを守ってくれる「門番」を導入することで、今時の日本が置かれている状況をシンプルに、少々戯画的に描き出す確かなちから。この門番の台詞、「門を守ることがミッション(どちらかの国を守ることではなく)」という台詞が秀逸。 ラストシーン、門を踏み越えてこちら側に来ようとする人は、こちら側から踏み越えていった人の鏡写し。そら恐ろしい気持ちを残すのです。

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