速報→「アンゲーテッドコミュニティ」北京蝶々
2010.5.28 14:30
今の時代を切り取る北京蝶々の新作は安全にまつわる人々の物語を90分。30日までテアトルBON BON。販売されている上演台本はスピンアウト短編(1ページちょいですが)が2編つき。
十年以上前に居なくなった子供。その町の子供は皆防犯グッズをもち、外で遊ぶと青少年指導員に叱られたり、住民たちが防犯サークルを作って独自に活動していたりしている。警備会社が塀に守られたゲイティッドコミュニティを建設・分譲し周囲の住民はあこがれてはいるものの、高価格ゆえにとても入れない。再び子供たちの行方がわからなくなる事件が続発する。
消えていく子供たちということは治安が悪いので囲って外に出さないというのはヒステリックにすぎると感じてしまうのは子供の居ないアタシの最初の印象だけれど、当然のことながら、それは正しくありません。それぞれの人の思いも理由もきちんと積み重ねていて、納得できる感じ。
個人や市民のネットワークが安全を守るのは自治が機能するということで、たとえばアタシの住む長野だと(住んでいる領域の広さのわりに救急車も消防車も警察もまばらになるざるを得ないから)普通に機能している社会の姿として納得できますが、反面それが互いを監視するという側面もきっちり描き出していて、それが行き過ぎた姿が見えるのは確かな作家の視点。
上下二段に分けた舞台。ほぼ一色、スライドさせるだけで扉の形を変えてスピーディーに場転させるアイディアは秀逸で印象に残ります。
ネタバレかも
たとえば映画版「踊る大捜査線」あるいは「虚構の劇団」の一本など監視カメラを取り上げるものはいくつかありますが、監視カメラを個人が通販で売り、それがネットワークにつながっていることで、この街を監視するということが「個人にもできてしまう」というのは新しい感覚でおもしろい感覚です。 前科のある人間が罪を償ってもゲートされ、戻ることのできない社会を「ゲーテッドコミュニティ」二つの意味にするのもちょっと唸らせられます。
誰が犯人かわからず、行方のわからないままの子供たちが増えていくという気味の悪さはある種のハメルンの笛吹きを連想させます。警察と警備会社の不透明さ、なるほど今の時代っぽい。時代を描くといえば失業している人が多くでてくるのも彼らは一貫していて若い作家らしい。
正直にいえばシーンの間のリズムは気持ちいい運びなのだけれど、シーンそれぞれは物語を貫くようなテンポが分散している感じがあってちょっと戸惑います(うまく表現できませんが)。でも、それは大きな問題ではありません。金曜昼という回にもかかわらずきっちり満員にしているわけでその確かなちからは今回もちゃんとあるのです。
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