速報→「ヤナギダアキラ最期の日」渡辺源四郎商店
2010.5.2 19:00
ナベゲンの新作。青森で一週間を越える公演を経ての東京公演。95分、5日までスズナリ。思わず支援会員に(実はお得)。
ホスピスに暮らす老人、彼の最後の望みは果たして叶い、フィリピンから、あのころのことを知る知人が訪ねてくる。
実際のところ、芝居や映画の題材としてはわりと使われている感のあるファンタジー。かなり無茶な設定のワンアイディアだけれども役者の年齢や役者の力のバランスもフルに使っての説得力を持たせるというのは、役者を抱える劇団というシステムの強みを感じさせます。
当日パンフで作家は四十代後半を迎えて向き合う死について、という言葉。アタシはまだ四十代前半だけれど、そういう感覚は日に日に強くなります。この芝居のようなファンタジーではあり得ないけれど、例えば芝居をしている、たとえば仕事をしている若い人々を時折眩しく感じるような、そんな感覚が、この芝居の中では散りばめられています。そのコントラストは残酷だし、現実なのです。
ねたばれ
戦友と分けあうはずだった不老不死の妙薬、一人はそれを食し、一人はそれを他の助けたい人に与えた。このたった一つの(時間的な)起点のズレが数十年を経て大きく広がります。 年齢を重ねていくことで近づく死。一人ではなくもう一人と共に暮らしていくということは、物語のもつたったひとつのギャップによって二人でいるがために感じる孤独だと感じます。アタシはいまのところ独りだけれど、誰かと一緒でいたとしても独りということはある、ということは語られるけれど、見た目のビジュアルの落差はそれを拡張する力があって、強烈なインパクトを残すのです。
この芝居がここでしか出来ないキーとなる宮越昭司は、しかしロビーで見かけるとびっくりするぐらい元気。この味は他ではでない確かさ。介護する役を演じる工藤静香、言葉の一つ一つ、目線のすべてを見逃したくない中心の一人。フィリピンから来た男を演じる山田百次も見た目の軽さと内面の苦悩のギャップを体現。工藤由佳子はコミカルな風ではあるけれど、色香を振りまく感じは少しばかり眼福なのだけど、ファンタジーにケリを付ける怖さもきちんと。牧野慶一演じる親分は今までにない感じで、静かさ故の怖さのようなものをしっかり。三上晴佳はこういう、ワタワタさせる役をやらせると絶品で支えます。
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