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2010.05.17

速報→「革命日記」青年団

2010.5.15 15:00

若手公演として二年前に上演されたものを本公演として再演。90分。16日までアゴラ劇場。

活動家たちのアジト。夫婦として日常生活を送る一軒家の居間。それまでの活動方針が突然変わり、計画されていた空港襲撃に加えて大使館襲撃を同時決行ということになり資金も人材も不十分の中の変更に戸惑う声もあるが、表だって批判したりするものはいない。間近に迫った空港襲撃の段取りを打ち合わせるために集まった人々だが、表向きふつうの生活をしている夫婦の家には、隣近所やら、非合法活動を知らない支援家などが不意に訪れる。

いわゆる既存の左翼の非合法活動の枠組みで考えると空港だの大使館だのの襲撃というのは今時の日本で考えたら明らかに実現性が薄い感じでリアルさのかけらもないとは思います。これはアタシ以上の世代では顕著にに感じることだろうと思うのだけど、大学からしてそういうことのかけらもない中だったあたしには、あのころの他の大学にも残渣はあっただろうあれがリアルだったかというと、それもアタシのは遠い世界の話。作家はそのリアルさのかけらもないことを承知でこの虚構に満ちた物語を描こうとしたのだと思うのです。

当日パンフにあるとおり「個と集団」のありかた、それをオウムの問題に照らして描き出した今作は、「革命」を「宗教」や「芸術」と置き換えても、世界を変えることが本当にできるかどうか、びっくりするぐらい内部の人々と部外者の間の認識の差の激しさという意味ではたやすく置き変わる感じであたしの中には腑に落ちる感じがするのです。

若手公演を見たときにリーダの演説の空虚さに感じた怖さよりも判断を誤ったのではないかということを指摘した女性(鄭亜美)に対して、男女の問題に貶めて正しく議論できないリーダと、その女性を孤立させてしまうこの集団の姿の絶望。もう一人の女性(中村真生)は活動にすべてを捧げている、女性同士の対立軸になってしまう、というのも、どこか今時の会社の何かをみてしまうよう。

この会社のような関係に加えて、一方で町内会のような緩くて、しかし抜けられないコミュニティや、親子や親戚、夫婦という単位というイキモノとしてのコミュニティをこれだけ詰め込んで90分。コミカルさなど織り交ぜて飽きずに、しかし詰め込んだ感じもなくて濃密な物語が楽しいのです。

当時の若手を中心に据えてもしっかりと本公演として成立させられる確かな二年間の成長。鄭亜美、中村真生、梅津忠など中心の人物もそうだし、福士史麻、木引優子、能島瑞穂なども、若手だとおもっていたら、それなりの年齢になっている感じにもなって確かな力で頼もしい。畑中友仁演じる、善意のシンパの悪意のない、しかし自分にすべてをひっぱってくるある種のうざったさ加減は、なんかものすごい造型で、「あるある」という感じ。実は一番イヤな感じの爪痕をアタシの気持ちに残したりも。

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