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2010.05.25

速報→「めぐるめく」KAKUTA

2010.5.23 14:00

KAKUTAの二年半ぶり新作。30日までシアタートラム。120分。

交通事故で夫を失い、息子を残したまま11年間眠り続けた四人姉妹の長女。次女は作家で忙しい日々、三女は粗暴なダメ男にひっかかり、四女は雀荘バイトの日々で酒が手放せない。残された息子は高校生になり、四女の家に同居している。姉妹たちは長い時間なかで見舞いにも訪れなくなっている。
ある日、眠り続けていた長女が目覚める。リハビリのあと、妹たちを訪ね回り、夫の墓参りに誘う。四人姉妹、息子、なくなった夫の弟、献身的な介護師たちとの道中が始まる。

少なくとも最近のKAKUTAでは珍しい(もしかしたら初めてかもしれない)、薄い青色の抽象的な舞台。劇場のタッパの高さをしっかりと埋め、病室、狭いアパートらしい部屋、列車、風呂場、街の中とカットを割り付けていくかのようにスムーズなシーンの運びはリズムがあって、家族というわかりやすい物語とあわせて老若男女問わずに楽しめる仕上がり。

SFファンタジーのような味付けの枠組み。没交渉でぎこちないというよりは仲違いに近い姉妹たち。奇跡のような長女の目覚めは、否応なく彼女たちを再会させます。長女の失われた11年、息子との関係の回復というもっとも核になりそうでしかもドラマチックな部分を描き出すよりも、長女「以外」の人々の関係の変化という地味な部分を後半かけて丁寧に描き出そうとしているのだと思います。

作演を兼ねる桑原裕子の荒れキャラはあまりに得意技ではあるけれど楽しい。若狭勝也の旅人の物語の造型は少々無茶な感じもするけれど、介護士演じる辰巳智秋との掛け合いが楽しい。 今奈良孝行の落ち着いた人物の描き方はアタシには珍しい感じだけれどしっかり。

ネタバレかも

前半では長女の失われた11年が物語の核になるかと思わせる展開なのだけど、じっさいのところそれは全体の流れでは序章という扱いなのだと思うのです。長女と今ひとつ中が良くない四女は生活が荒れているけれど長女の息子を引き取って同居していて、長女のことが大好きな三女はだめンズ男に引っかかり、次女は自分の作家としての生活を成功させていて費用面では出していても長女のことはあまり気に留めていない。11年眠り続けているという彼女たちの「日常」は、肉親ではあっても風化していた長女との関係が、SFめいた「目覚め」によって一変するかに見えます。が、再び眠りにつく長女に残された彼女たちは、一歩先に進む予兆。それぞれの物語が完結しない感じで「開いたまま」終わる物語だけれども、確実に次の一本に進んでみせるのです。

それゆえに長女と息子という人物が物語の中で少々宙ぶらりんな感じがしないでもありません。それでも、彼らを含む人物たちの騒がしくてしかし悲しい物語は、気持ちに残るのです。

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